コロナ禍で、アメリカでは多くの有名小売り店が、チャプター11(民事再生)を申請したり、倒産・廃業したり、多くの店舗を閉めるなどの厳しい環境に置かれています。

日本でもおなじみのブルックス・ブラザース、J.クルーなどもチャプター11を申請しています。

そして最近では、アン・テイラー、ドレスバーンの親会社のアセナ・リテール・グループ(Ascena Retail Group、ASNA)なども同じくチャプター11を申請しています。

また、デパートメントストア老舗のJ.C.ペニーも5月に倒産しています。

店舗閉鎖に至っては、数えきれないほどです。

低価格帯セクターがコロナ禍でも活況

そうした中で、元気な小売りのセグメントがあります。

ダラー・ストア(Dollar Store)と呼ばれる、アメリカ版の「100円均一ショップ」です。

もちろん、アメリカなので100円ではなく、1ドルが基本です。

1ドルよりも価格が高いものももちろん置いてありますが、相対的に安いというよりも、そもそも売買単価が非常に安いもの(概ね10ドル以下といったところ)を売っているというのが特徴です。

実店舗中心の小売業の中では、唯一と言っていいくらいの、コロナ禍での勝ち組の状態のようです。

日本には進出していないので、あまり馴染みが無いかもしれませんが、次のような銘柄が代表的なものになります。

  • ダラー・ゼネラル(NYSE:DG)
  • ダラー・ツリー(NASDAQ:DLTR)
  • ファイブ・ビロー(NASDAQ:FIVE)

    更に、ディスカウント・ストアというところまで広げると、以下のような銘柄も該当します。

  • ビッグ・ロッツ(NYSE:BIG)
  • BJ’sホールセール・クラブ(NYSE:BJ)
  • オルリーズ・バーゲン・アウトレット(NASDAQ:OLLI)

    日本に店舗が無いので、イメージがつかみにくいかもしれませんが、なかなか面白いセクターです。

ディスカウントストアが成長している理由

日本では、最初の100円均一ショップは1985年にオープンしていますが、急速に増加したのはバブル崩壊後の1990年代です。

理由は非常に簡単で、不況で財布の紐がきつくなり、安く済むものは安く済ませる、という節約志向が強まったからです。

米国での成長とは、重なる部分と重ならない部分の両方があります。

米国の場合、そもそも所得格差が日本と比べると、はるかに大きいです。

常に節約生活を強いられる低所得者層が一定層(日本に比べるとかなり多い)います。

そうした層にとっては、日常の消耗品のようなものは、有名消費者ブランドである必要はなく、安いものを求める傾向が強いです。

それに加えて、今回のコロナ禍のロックダウンなどで、失業者が一気に増え、これまでの低所得者層だけでなく、将来に不安を抱えた中流層でも、節約志向に走る人々が増えたということが、大きな成長ドライバーになっています。

もう一つ、敢えて上げるなら、ソーシャル・ディスタンスが取りやすい環境にあるというのも言われています。

ダラー・ストアは小規模店舗(大手チェーンストアの1/10以下の規模)で、しかも大都会というよりは比較的小さな都市を中心に展開していたりします。

結果として、店舗があまり混在することが無く、「密」を避けることができます。

その上に、最近ではオンラインで注文して支払いを済ませ、店舗に買った商品をピックアップしに行くだけ、というシステムも導入されていて、店舗での滞在時間も少なくて済みます。

基本的には、生活必需品を極めて安価で提供しているので、節約志向の強い今、繁盛しやすいのは当然かもしれません。

注目すべきディスカウントストア銘柄

代表的な銘柄である、ダラー・ゼネラル、ダラー・ツリー、そして少し毛色の異なるファイブ・ビローについて、簡単に紹介していきます。

ダラー・ゼネラル

ダラー・ゼネラルは業界最大手です。

2007年にプライベート・エクイティ・ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)に買収されて非上場化され、その後2009年に再上場しています。

現時点で16,368店舗を全米に展開しています。

南部、東部、中西部の州を中心に45の州に進出しています。

都市部、郊外どちらにも進出していますが、店舗の75%は、人口が20,000以下の地域にあります。

先ほど、若干触れましたが、オンラインで注文、支払いを済ませた後に、店舗でピックアップだけするというシステムを導入しています(DG Pickupと呼ばれています)。

また、新しい試みとして、DG Freshという冷凍・冷蔵商品を戦略的に展開しています。

中間媒介業者を排除することで、食品を安く提供するという試みも展開しており、現在の節約志向の中で、成長のドライバーの一つとなっています。

多くの小売り店が店舗数の縮小を余儀なくされている中で、DGは2020年に1,000店以上新規開設し、1,500店舗以上を新装開店させる計画を続行中です。

利益率の高さ(純利益率が6~7%レベル)と、ROEが25~35%レベルで推移しています。

これは小売り、特に低価格商品分野では極めて高い収益性を保っていると思われます。

ダラー・ツリー

ダラー・ツリーは業界2番手です。

15,288店舗をダラー・ツリー、ファミリー・ダラー、そしてダラー・ツリー・カナダの名称で運営しています。

2010年にダラー・ジャイアント、2015年にファミリー・ダラーを買収して、今の大きさになっています。

ダラー・ツリーは、ダラー・ゼネラルと異なり、1ドル以上の商品がかなりあります。

ダラー・ツリーの場合は、この1ドルより高い商品の売り上げが、全体の売上や収益性を保つのに効果を上げているようです。

ダラー・ツリーも今年度、500店舗の新設(ダラー・ツリーで325店舗、ファミリー・ダラーで175店舗)を計画しています。

パンデミック前には550店舗の計画でしたので、若干減少させたものの、それでも、これだけの新規出店計画を継続中です。

ファイブ・ビロー

このディスカウント・ショップは上記2社と比べてユニークです。

ターゲットがティーン、プリ・ティーン(あるいはトウィーン)と呼ばれる層です。

ティーンは13歳~19歳、そしてプリ・ティーン(あるいはトウィーンと呼ばれる)は12歳以下で8歳くらいが下限の子供たちをメインターゲットにした小売りです。

この層の子供たちが基本的にはお小遣いで買えるレベルの価格で、この層が欲しがるものを幅広く集めた小売り店です。

この層がお小遣いで買いやすいもの、ということで5ドル以下が主要な価格帯になるので、Five Belowという名前が付けられているようです。

5ドル以上の商品もありますが、割安感はあるようです。

10ドルが上限くらいの商品価格設定になっています。

この少し高めの商品セグメントは利益率も高いので、Ten Below($5~$10)として、拡大中です。

ファイブ・ビローも節約志向の恩恵にあずかり、業績を伸ばしています。

今年、100~120店舗を新規オープンする予定で動いています。

純利益率が8%レベルなので、小売り業としてはかなり高い方かと思います。

まとめ

ダラー・ゼネラルは株価も長期で上昇し続けていますし、ダラー・ストア・セクターは注目して良いセクターかと思います。

ミレニアル世代は、ベビー・ブーマー世代に比べ節約志向が強いので、ワクチンの普及でパンデミックが収まったとしても、ダラー・ストアの顧客が減るということはないのではないかと思われます。

また、ファイブ・ビローのコンセプトは、アメリカだけで通用するものなのか、日本でも展開可能なのかも含めて、非常に興味深い銘柄です。

文・松本義和/提供元・The Motley Fool Japan

【関連記事】
仕事のストレス解消方法ランキング1位は?2位は美食、3位は旅行……
日本の証券会社ランキングTOP10 規模がわかる売上高1位は?
人気ゴールドカードのおすすめ比較ランキングTOP10!
つみたてNISA(積立NISA)の口座はどこで開設する?
【初心者向け】ネット証券おすすめランキング