モトリーフール米国本社、2020年11月29日投稿記事より
過去数週間に、ボーイング(NYSE:BA)の株価は大きく値上がりしました。
新型コロナワクチンや、米連邦航空局(FAA)による旅客機737MAXの運航停止措置の解除など、明るいニュースが理由です。
しかしながら、それらがボーイングのすべての問題を解決する訳ではありません。
航空旅客需要の回復に投資するなら、デルタ航空(NYSE:DAL)やジェットブルー航空(NASDAQ:JBLU)など、内容の良い航空会社に注目するべきでしょう。
航空業界の拡大に依存するボーイング
過去1カ月間にボーイング株を購入した投資家は、航空旅客需要が2019年の水準に戻りさえすれば、ボーイングの業績は回復すると信じているかもしれません。
しかし、必ずしも正しいとは言えません。航空会社の保有機数が感染拡大前に戻るだけでなく、現実に航空各社の業績が伸びなければ、航空機需要は2018~2019年水準を大幅に下回ったままとなるでしょう。
実際、ボーイングおよび欧州エアバスの1990年代の年間生産機数は、近年よりもはるかに少ない水準でした。
当然ながら、近年は全納入機数の中で更新需要は控えめでした。
2015~2018年に新規に納入された商業用ジェット機の3分の2超は、航空各社が事業拡大のために使用しました。
ボーイングは、商業用ジェット機で需要が圧倒的に大きいナローボディ機(内部の通路が1つしかないタイプの旅客機)で、エアバスにシェアを奪われています。
現在エアバスは、ボーイングの2倍近くのナローボディ機の受注残を抱えていますが、今は航空業界が再び拡大するかどうかが最大の注目点です。
高すぎる授業料を払った航空業界
米国航空各社の株価は、過去10年間良好なパフォーマンスを上げていました。
業界再編によって利益が持続したからです。
感染拡大前、デルタ航空とジェットブルー航空の株価パフォーマンスはS&P500指数を上回り、10年前の株価との比較でも、依然としてジェットブルー航空は128%、デルタ航空は189%上回っています。
しかし、この航空業界の好調は世界的なものではありませんでした。
国際航空運送協会(IATA)によれば、昨年の世界の航空会社の純利益は260億ドルでしたが、このうち65%を北米が占めます。
デルタ航空の純利益は48億ドルで、同社1社で世界の18%を超える利益を上げました。
欧州やアジア・太平洋地域では、1桁前半の売上高純利益率は珍しくありません。
ラテンアメリカ、中東、アフリカは、昨年は赤字でした。
近年、多くの航空会社が不採算にも関わらず急速に事業を拡大し、感染拡大前にすでに窮地に陥っていました。
そうした航空会社は、まず規模の縮小で収益力を取り戻さなければ成長に向けた拡大は難しいでしょう。
良好な航空会社株
先週IATAは、2021年は世界のどの地域も全体として航空会社は赤字だろうという見通しを発表しました。
航空会社の倒産が増える可能性があり、少なくとも各社は規模の拡大よりも縮小と経費削減に専念するでしょう。
経営内容が良好な米国の航空会社は、世界の各社に先行して収益力が回復するはずです。
アナリストコンセンサス予想によれば、デルタ航空とジェットブルー航空は共に来年は2019年に比べ30~40%の減収にも関わらず、収支は均衡に近付きそうです。
両社は減収による影響を打ち消すべく、効率性で劣る航空機の退役、間接経費の削減、路線網の見直しを行っています。
コスト削減により、需要が完全に戻れば、2023年の利益は過去最高になるかもしれません。
また、今年急増した有利子負債の返済に十分なフリーキャッシュフローを生み出すでしょう。
加えて、両社は共に今年の赤字を賄うための新株発行はせず、株主持分は希薄化していませんが、株価は2020年初の高値を大幅に下回っています。
需要が2019年水準に戻れば、デルタ航空とジェットブルー航空は完全な利益回復が見込めるのに対し、ボーイングの航空機需要が戻るには、世界の航空各社の業績成長を待たねばならないでしょう。
投資対象としては、航空2社に注目するべきと考えます。
文・モトリーフール編集部/提供元・The Motley Fool Japan
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