ピーター・リンチをご存知でしょうか。
彼を知らなくても、テンバガーという言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか?
「テンバガーを狙う投資法」を、日本株投資で教えている人もいるようですが、このテンバガーという言葉は、株価が買った価格の10倍になる株のことを言います。
この言葉は、ピーター・リンチが彼の著書”One Up On Wall Street”(邦題「ピーター・リンチの株で勝つ」)で使ったことで有名になりました。
彼は、フィデリティというボストンにあるミューチュアル・ファンド会社で運用を行っていたファンド・マネジャーで、稀代のストック・ピッカーとして有名です。
ピーター・リンチの投資法
ピーター・リンチは1977年から1990年まで、フィデリティのマゼラン・ファンドというミューチュアル・ファンドを運用していました。
彼がこのファンドを引き継いだ時の運用資産額は$18mil(約18億7千万円)で、彼がこのファンドの運用からリタイアした時には、$19bil(約1兆97百億円)まで膨れ上がり、そのリターンは年率で+29%と驚異的な数字を残しています。
彼の投資は、他のプロと比較してもとてもユニークなものでした。
ポートフォリオ・マネジャーというよりは、ストック・ピッカーと呼ぶのがふさわしいと思います。
時代も良かったと思いますが、マゼラン・ファンドのポートフォリオは、全体として管理されている、というよりは、ストック・ピックした銘柄の集合体、といった方が良い状況でした。
このポートフォリオに入っていた銘柄の数は、約1,400と言われています。
彼も多少は全体のバランスも考えていたようですが、良いと思ったものは買う、買ってからリサーチをしっかりやる、ということも多かったようです。
気になった銘柄は少しでも買っておく、持っていることで、リサーチのレーダーに入れ、リサーチをしつつ、その企業が大きく上昇するタイミングを待つ、というスタイルだったようです。
想定した通りに変化が起きないと、売っていたので、長期で持つ銘柄があっても、ほとんどの銘柄の保有期間は1~2か月程度しかなかったようです。
小型成長株が主戦場
彼が、これほど沢山の銘柄を保有していた理由は、主戦場としていたエリアにも理由があります。
彼は、株で利益を出すには何と言っても「2、3年前に黒字化して今後も増益見通しの小型成長株を買うのが一番」と言っています。
彼が最も得意としていたのが、小型成長株のエリアでした。
この分野は、巨大な機関投資家があまり取り組んでいないエリアです。
小型株は、巨大な資金が買いに入ったり売りに入ったりすると、自分で自分の首を絞めることになり(買おうとすると株価を吊り下げ、売ろうとすると株価を押し下げてしまう)、身動きが取れなくなります。
そうした影響がないようにするために、1銘柄当たりの投資額を小さくすると、今度はポートフォリオの中に入る銘柄数が膨大になり、管理が大変になります。
これらの理由により、機関投資家が少ないエリアなのです。
彼は、大きな機関投資家が入って来ない上に、ウォールストリートのアナリストのリサーチがあまり及んでいない、そのエリアにターゲットを絞ることで、勝ちパターンを作っていっています。
小さな失敗を大きな利益で補う
投資対象が小型株ですから、まだまだ成長も安定している訳ではありません。
彼自身認めていますが、失敗した銘柄も非常に多いです。
それでも、彼の成績が目覚ましかったのはなぜでしょうか?
彼は、例えば5銘柄を買い、1年で3銘柄が75%下がり、1銘柄が10倍になり、残る1銘柄が20%下落しても、これで良いと考えて投資していました。
すると、どのようなパフォーマンスになるでしょうか?
全体で100の資金があり、5銘柄を20ずつ買い、上のようなパフォーマンスだとすると、3銘柄が5になり、1銘柄が200になり、最後の1銘柄が16になります。
合計で231です。
100が231になったので、運用成績としては、+131%と素晴らしい成績と言えるでしょう。
しかし、5銘柄のうち4銘柄が下がっており、3つは大失敗です。
テンバガーのような大きく上昇する銘柄を一つ保有できることの利益は非常に大きい、ということが良く分かります。
10倍になる可能性のある銘柄は小型株に圧倒的に多いです。
しかも失敗もしやすいので、ともかく沢山買っています。
言い方は悪いですが、数を打てば当たる銘柄の絶対数も増えていきます。
これが可能なのは、彼が偏執狂的なまでのリサーチを行っていたからです。
彼のレーダースクリーンは普通のプロの何倍も広いと言われています。
これだけリサーチを徹底的に行うのは、バフェットとピーター・リンチくらいではないかと思われます。
ピーター・リンチから学ぶ、成長株投資の心構え
彼がそれだけ努力したストック・ピッキングの方法は、そのままマネすることは個人投資家には難しいですが(プロでも難しい)、それでもかなり参考になると思います。
彼は、ハイテクは得意ではなかったようですが、消費財系は得意であったようです。
投資のアイデアを奥さんの話やショッピング・モールを歩きながらの観察で得ることも多かったようです。
そのヒントをもとに、深く調査して買っています。
彼が最も好きだったのは、先ほども述べましたが、小型成長株のエリアです。
成長率が低すぎる銘柄は当然駄目ですが、50%を越えているものも避けています。
流石に50%を越える成長率は持続的なものではないと見ていたからです。
高PER銘柄はダウンサイドのリスクが大きいかもしれませんが、状況を正しく理解していれば、アップサイドはずっと大きいと考えており、PERが過大でない限り、むしろ積極的に買っていたようです。
また、ストーリーは魅力的ですが、売上や利益がまだついて来ていないコンセプト銘柄も避けています。
経営者が素晴らしいが故に業績が良い銘柄というのも、特に好んでいません。
経営陣もいずれ変わる可能性があるので、誰にでも簡単に経営出来るようなビジネスが良いと言っています。
彼は、小型成長株を得意としていましたが、それだけに固執していた訳ではなく、景気循環で大きく成長が見込まれる時には、大型の景気循環株を大きく持つこともありました(一時フォード株を大量に保有していました)。
また、ターンアラウンド・ストーリーも好きだったようです。
その一方で、多くの人が買うような人気株は好きではなかったようで、むしろ、そうした人気銘柄は絶対に手を出さないようにしていたようです。
そうした高成長銘柄は、新規参入により競争激化で利益率が低下しやすく、人気に陰りが出ると大きく売られやすい傾向にあります。
彼が、買い候補の条件で目安となる基準を示しています。これは一般個人投資家向けのアドバイスとしてはとても参考になるものです。
まず低PERであること、ROE(自己資本利益率)が15%~20%、売上高利益率が10%前後、この三つです。
これらを目途にし、かつ競争力があって、誰でも出来るフランチャイズ、優れた経営者に関わらずできる簡単なビジネスであること。
また、ピーター・リンチは次のように言っています。
「株投資で勝つには、まだ誰も知らないことを見つけたり、みんなが固定観念に囚われて手を出せないところを頂戴することが必要だ」
そして、これがまさに株式投資の醍醐味でもあります。
文・松本義和/提供元・The Motley Fool Japan
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