モトリーフール米国本社、2020年12月2日投稿記事より
エネルギー関連銘柄はここ数年間、総じて人気がありません。
石油・ガスは世界的に供給過剰となっており、株価は低迷しています。
さらに新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)によって需要が急減し、状況はさらに悪化しました。
しかし最近、この厳しい状況に少し希望を与える動きが出ています。
今、エネルギー関連銘柄に注目するのが良いと思われる理由を3つ紹介します。
1. 需要と供給のダイナミクス
供給過剰な状況での需要の縮小というダブルパンチにより、近年、エネルギー関連銘柄は低迷していました。
しかし現在、需要と供給のどちらにも回復が見えています。
米国エネルギー情報局(EIA)の予想によると、2021年の世界の石油製品消費は、日量9,880万バレル(bpd)となっています。
2019年の平均1億150万bpdと比べるとまだ低水準ですが、2020年の平均9,290万bpdと比べると大きな上昇です。
もちろん、米国やヨーロッパ各国での新型コロナウイルス感染再拡大により、需要回復の時期は遅れる可能性もあります。
一方供給面についてEIAは、米国での原油生産量は、2019年の1,220万bpdから2020年には1,140万bpdへ減少すると予想しています。
2021年の予想は1,110万bpdです。
これは、既存油田からの減産では需要減に対応しきれなかったために、採掘活動を縮小したことによります。
EIAは、2021年下半期には、採掘活動や生産量は拡大すると予想します。
世界的に見ると、世界石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の主要原産国は、減産の延長を検討しています。
話し合いは不調に終わる可能性もあるものの、新型コロナウイルス感染の再拡大で不安定な需要回復が崩れる恐れを考えると、減産の延長は理にかなったステップだと思われます。
2. 石油・ガス会社の長期見通し
投資家がエネルギー関連銘柄を嫌気しているもう一つの理由は、再生可能エネルギー源が石油・ガスに取って代わるという懸念があることです。
実際、世界のエネルギー消費における再生可能エネルギー源の割合は上昇しつつあり、今後も上昇を続けると見られています。
一方で、エネルギー全体の需要もまた、上昇が予想されます。
つまり、世界のエネルギー需要における石油とガスの割合が下がり続けるとしても、絶対的な量は増え続けるということです。
国際エネルギー機関(IEA)は、現在実施している政策の中で、2040年以降まで世界的な石油需要は高まり続けると予想しています。
同様に、米EIAは、米国の天然ガス生産は2050年代まで上昇を続けると予想しています。
2020年から2025年までの年平均生産成長率は、1.9%の予想です。
近年ではEIAの予想はあまり信頼できるものではありませんが、この予想を裏付ける兆候があります。
特にアジアの新興国で増え続ける世界人口と、向上を続ける生活水準が、エネルギー需要を高めると考えられています。
様々なエネルギー源と相まって、石油・ガスは引き続き、重要な役割を果たすことでしょう。
3. エネルギー関連銘柄は現在割安
11月にエネルギー関連銘柄は上昇しましたが、年初来高値からは大きく乖離しています。
その中でも妙味のあるのは、総合エネルギー大手のシェブロン(NYSE:CVX)です。
株価は年初来高値を20%以上下回る状況にあります。財務状況は健全で生産コストは低位であり、いずれ回復の時期が来れば、有利な立場につくと思われます。
本稿執筆時点でこの他の魅力的なエネルギー関連銘柄としては、年初来高値より40%以上下落している、石油精製のフィリップス66(NYSE:PSX)があります。
ここ数年のエネルギー関連銘柄の下落により、配当利回りは高くなっています。
シェブロンとフィリップス66の配当利回りは、どちらも過去最高となっています(本稿執筆時点)。
同様に、上流部門大手のコノコフィリップス(NYSE:COP)や、中流部門マスター・リミテッド・パートナーシップ(MLP)のエンタープライズ・プロダクツ・パートナーズ(NYSE:EPD)も、過去の平均配当利回りを上回っています(本稿執筆時点)。
エンタープライズ・プロダクツ・パートナーズの借り入れは少なく、利息カバレッジ・レシオは健全であり、8%の配当利回りは魅力的となっています。
コノコフィリップスは開発・生産事業者として石油・ガス価格への直接的なエクスポージャーがあるため、価格上昇の動きが少しでもあれば、恩恵を受けるでしょう。
先日発表された、同業のコンチョ・リソーシズの買収により、低コストの石油生産企業という立場を一層強固なものにしています。
文・モトリーフール編集部/提供元・The Motley Fool Japan
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