世界で一番有名な投資家であるウォーレン・エドワード・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ(NYSE:BRK.A)(NYSE:BRK.B)社のポートフォリオは、世界中の投資家たちが注目しています。
バフェット氏は同社の株価を50年間で2万倍にまで上昇させました。
毎年の有価証券報告書の最初のページには、アメリカを代表する株価指数の一つであるS&P500との比較が載っており、S&P500が約50年間で140倍であることを踏まえると、2万倍はまさに桁違いの数字です。
彼の投資スタイルは超長期によるバリュー投資と呼ばれるもので、将来の成長性から考えた適正価格よりも割安な銘柄を購入し、成長するまで長く保有し続け、高く売却することです。
しかし、近年ではポートフォリオの組み換えを頻繁に行っており、特に2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的大流行に伴い、多くの銘柄を売却・購入しています。
2015年と2020年のバークシャー・ハサウェイの保有上位15銘柄(市場価値順)を比較すると、よくわかります。
今回は、2020年に売却を行った銘柄について詳しく見ていきます。
2015年 | 百万ドル |
ウェルズ・ファーゴ | 27,180 |
コカ・コーラ | 17,184 |
アイ・ビー・エム | 11,152 |
アメリカン・エクスプレス | 10,545 |
プロクター・アンド・ギャンブル | 4,683 |
フィリップス66 | 4,530 |
U.S.バンコープ | 4,346 |
ウォルマート | 3,893 |
ムーディーズ | 2,475 |
ゴールドマン・サックス | 2,053 |
サノフィ | 1,896 |
ディア・アンド・カンパニー | 1,690 |
AT&T | 1,603 |
チャーター・コミュニケーションズ | 1,367 |
ダヴィータ・ヘルスケア・パートナーズ | 1,291 |
2020年9月 | 百万ドル |
アップル | 89,432 |
バンク・オブ・アメリカ | 21,969 |
コカ・コーラ | 17,872 |
アメリカン・エクスプレス | 14,433 |
ムーディーズ | 6,777 |
ウェルズ・ファーゴ | 6,082 |
U.S.バンコープ | 4,858 |
ダヴィータ・ヘルスケア・パートナーズ | 3,014 |
バンク・オブ・ニューヨーク・メロン | 2,796 |
チャーター・コミュニケーションズ | 2,659 |
ベリサイン | 2,650 |
JPモルガン | 2,080 |
ビザ | 1,929 |
ゼネラルモーターズ | 1,889 |
リバティメディア | 1,488 |
- アメリカン航空グループ(航空銘柄)
- サウスウエスト航空(航空銘柄)
- デルタ航空(航空銘柄)
- ユナイテッド航空(航空銘柄)
- オキシデンタル・ペトロリアム(石油銘柄)
- フィリップス66(石油銘柄)
- ゴールドマン・サックス(金融銘柄)
- トラベラーズ(保険銘柄)
- レストラン・ブランズ・インターナショナル(一般消費材銘柄)
コストコ・ホールセール(生活必需品銘柄)
特に航空銘柄は合計で約40億ドル分保有していただけに、衝撃は大きいものとなりました。
バークシャー・ハサウェイ社は株主総会にて「今回の新型コロナウイルスの影響で、ビジネスを一時的に止めなければならない業界があり、航空会社もそのうちの一つです。これは自分たちにはどうすることもできない事であり、航空会社の株は売却するしかなかった」としています。
またバフェット氏は、2020年2月つまりコロナショックが起こる直前にデルタ航空株を買い増ししており、そのことについて「間違いであった」とし、「外出制限が人々の行動に与える影響は分からない。3~4年後に、昨年までのように飛行機に乗るようになるのか見通せない」と述べていました。
原油価格がコロナウイルスによる供給過剰で急落したことにより、業界全体の業績が悪化しました。
特にオキシデンタル・ペトロリアム社は現金による配当が支払えなくなり、バークシャー・ハサウェイ社に対して株式を代わりに割り当てることになりました。
同社株を大量に保有することになったものの株価は下落し、バークシャー・ハサウェイ社に多大な損失が発生したこともあり、完全売却に至ったと考えられます。
フィリップ66社の関しては、数年前から保有数を減らしており、コロナショックが完全に手放すいい機会になったと考えられます。
ゴールドマン・サックス社が2008年の金融危機時に窮地に追い込まれていたところを、バークシャー・ハサウェイ社が約50億ドルに及ぶ株を購入したことから、両社の関係は始まりました。
どん底で買った同社銘柄は長らく保有されていましたが、2020年の上半期ですべて売却しました。
これは、新型コロナウイルスの収束目途が不透明であることと、ゼロ金利政策が長期化していることから、アメリカ経済の将来に対して弱気となり、手放したと考えられます。
トラベラーズ社およびレストラン・ブランズ・インターナショナル社について、バフェット氏はコメントしていませんが、新型コロナウイルスの影響で業績が低迷し、フリーキャッシュフローが減少したことで、株主へ還元することが著しく難しくなったことが要因と考えられます。
依然として好業績なコストコ・ホールセール社株を完全に売却した理由は正確にはわかりません。
バークシャー・ハサウェイ社は2020年5月時点で1,370億ドルもの現金を保有しており、バフェット氏は「大型買収をしたいのだが、今の株式市場には魅力的なバリュエーションの、魅力的な会社がない。しかし、大型買収をする意思はいつでもある。明日にでも、魅力的な案件が出てくれば500億ドルの買収でも喜んでする。ただ、今この段階でそういう案件は見つかっていない」とコメントしていました。
新型コロナウイルスにより「世界が変わった」とする同氏は2020年を契機に、ポートフォリオを一新するために現金を集めている可能性があります。
現在、バークシャー・ハサウェイ社における投資判断は、バフェット氏の後継者候補とされるトッド・コームズ氏とテッド・ウェシュラー氏に任せられているとのうわさがあります。
そのため、同社のポートフォリオに関しては、今までとは異なる動きが観測できるかもしれません。
たとえば金鉱株であるバリック・ゴールドの保有に関して、バフェット氏はもともと金に対して否定的であったにもかかわらず購入したため、新たなバリュー投資と解釈されていましたが、最近では後継者である両名による判断だったのではないかと言われています。
今後、バークシャー・ハサウェイ社のポートフォリオがそのままバフェット氏のポートフォリオとは言えなくなるかもしれません。
同氏は89歳となり、いまだに健康だと主張していますが、多くの投資家が注目し参考にしていたバフェット銘柄が見れなくなる日も近いのかもしれません。
文・白紙/提供元・The Motley Fool Japan
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