モトリーフール米国本社、2020年11月26日投稿記事より
S&P500指数(SNPINDEX:^GSPC)は下落分を完全に取り戻して過去最高値を更新しましたが、ほとんどの企業が新型コロナウイルスのパンデミック前とは程遠い状況にある中で、株価水準は本当にそれだけの価値があるのでしょうか。
コロナウイルスワクチンの完成も見込まれますが、株式市場の暴落に備えるにはどうすればよいのでしょうか。
投資家の不安を掻き立てるこうした憶測話にうんざりしている方もいらっしゃるかもしれませんが、今後数カ月に複数のマイナス面のカタリストが待ち受けていることは間違いありません。
ワクチンをめぐっては万事順調を織り込み済み
コロナウイルスワクチンは、市場関係者にとって最大の希望であると同時に最大の脅威でもあります。
11月初め、モデルナ(NASDAQ:MRNA)は臨床試験段階にあるコロナワクチン候補(mRNA-1273)の中間解析で94.5%の有効性が示されたと発表しました。
ファイザー(NYSE:PFE)とビオンテック(NASDAQ:BNTX)が共同開発中のワクチン(BNT162b2)の中間解析でも95%の有効性が示されました。
これで安心かと言うと、そうでもありません。
ワクチンの有効性の持続期間、基礎疾患の有無といった患者の状態による有効性といった詳細情報は明らかにされていません。
物流面での課題もあり、ファイザー/ビオンテックのワクチンは、米国で流通しているワクチンの中で最も低いマイナス70℃で保存する必要があり、薬局や一般的な診療所にそれほど低温の保管設備はありません。
一方で、モデルナのワクチンにはそれほど厳格な温度管理の必要はありません。
また、調査機関ピュー・リサーチが実施した9月の調査によれば、すぐにコロナワクチンを接種できるとした場合に接種を希望すると回答した米国人はわずか51%で、5月調査の72%から低下しました。
ワクチンの接種が進まなければ、ウイルスの感染が持続し、景気回復の遅れにつながる可能性があります。
つまり、株式市場はワクチンの開発、流通、接種が順調に進むことを織り込んでいますが、そう首尾よく事が進むとは限らないということです。
市場の再暴落は避けられない
「過去のパフォーマンスは将来の結果を保証するものではありません」というお決まりの一文がありますが、株式市場で歴史は繰り返されてきました。
そして過去のデータは、市場の暴落または調整局面が短期的に避けられない可能性を示唆しています。
1960年以降、S&P500指数は9回の下落相場(20%以上の下落局面)を乗り越えてきました。
直近の2020年3月を除く過去8回の下落相場の底打ちから3年以内に、同指数は10~19.9%の調整局面に合計13回も直面しています。
言い換えると、下落相場からの回復期間中に市場はある程度の規模の下落局面を必ず1~2回経験し、しかもその大半は底打ちから3年以内に起こっています。
下落相場からの回復期間に限らなければ、1950年の年初以降、S&P500指数が10%以上下落した調整局面は38回、つまり平均1.84年ごとに起きています。
2010年の年初以降では5.8%以上の調整局面は15回あり、これは8.7カ月に1回という計算です。
歴史を見ても市場暴落の時期、期間、暴落の程度を正確に予測することはできません。
しかし、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティ指数(VIX指数)は平常時の水準を大幅に上回っており(執筆時点)、ちょっとしたことで投資家センチメントは揺らぐ可能性があります。