投資を始めると、勉強している最中やニュースなどで聞きなれない単語に触れる機会があります。

すべての単語を知っていないと投資ができないという訳ではありませんが、知っておくことで投資のことや経済の仕組みなどを理解できるようになります。

そこで今回は、株式の希薄化率の25%ルールについて解説します。

株式の希薄化とはどういうことなのか、25%ルールと300%ルールの違い、希薄化率の計算方法なども合わせて解説します。

株式の希薄化とは

株式の希薄化とは、第三者割当増資によって株式が増えたことにより、1株あたりの価値が下がる現象を指します。

1株あたりの価値とは次の2つになります。

  • 1株あたりの利益
  • 1株あたりの企業支配力

    つまり、株式は増えて当期純利益が変わらないと、既存の株主の利益や企業への発言力が低下するという事態を招きます。

    どちらも株式の希薄化における問題点のため、順番に解説します。

1株あたりの利益の減少

株式は当期純利益が株主への配当金の原資となります。

そのため、当期純利益が増えないまま発行済株式数が増えてしまえば、1株あたりの当期純利益(EPS)は下がってしまいます。

たとえば、当期純利益が2億円で発行済株式数が4,000株の企業があったとします。

この時点での1株あたりの当期純利益は次の式で求めると、50,000円です。

  • 1株あたりの当期純利益(EPS)=当期純利益÷発行済株式数

    この企業が第三者割当増資によって1,000株の新株を発行した場合は、EPSは40,000円に変化します。

    このように株式の希薄化は株式の利益を減少させてしまいます。

    また、EPSは株主が投資をするかどうかの判断材料となる、企業の収益力を判断する指標として用いられます。

    このEPSが低下すると株主や投資家は企業への期待感を下げることにつながり、結果として株価の下落を招きやすいというリスクもあります。

1株あたりの企業支配力の低下

株式は株主総会での決議に参加して票を入れる議決権という権利も含まれます。

多くの株式を保有している方はそれだけ議決権を多く保有しているため、持株比率が高くなり企業への一定以上の支配力を有しています。

しかし、第三者割当増資によって発行済株式数が増えれば、株主たちの持株比率も変化し、既存株主の支配力や影響力を低下させてしまいます。

また、第三者割当増資は特定の第三者に新株を引き受ける権利を付与するため、新株は経営陣以外が保有します。

つまり、第三者割当増資をすることで経営陣の持株比率は必ず下がり、経営陣の企業への影響力が低下するという事態を招きます。

希薄化が投資家や株価に与える影響

第三者割当増資を実行すると、株式の希薄化は避けられません。

1株あたりの価値が下がるというのは、投資をする際のネガティブな情報となるため、株価が下がる原因にもなります。

また、増資を行う目的が財務状況の改善といった、ネガティブな内容だと同様に株主の反発が予想されます。

一方で、第三者割当増資を実施するのが、新規事業立ち上げや技術開発といった事業成長が望めるポジティブな理由だと株主が納得し、株価が上がる場合もあります。

また、第三者割当増資を引き受ける出資者との相乗効果を期待できれば、投資家からの評価も上がります。

株式の希薄化は株価を下げるリスクはありますが、第三者割当増資を実施する理由に株主が納得できる、あるいは事業成長を望める場合は株価を上げる要因にもなります。

希薄化率とは希薄化を防ぐためのルール

希薄化率とは、過度な株式の希薄化を防ぐために設けられたルールです。

東京証券取引所は株式の希薄化によるデメリットから株主を守るために、次の2つのルールを設けています。

  • 25%ルール
  • 300%ルール

    それぞれ、どのようなルールなのか順番に解説します。

25%ルール

25%ルールとは、株式の希薄化率が25%以上になる場合に適用されるルールです。

希薄化率は次の計算式で求めます。

  • 株式の希薄化率=増資後の株式数÷増資前の発行済株式数×100

    例えば、発行済株式数が4,000株で、第三者割当増資によって新株を1,000株発行する予定の企業の希薄化率は25%となるため、25%ルールに適用されます。

    希薄化率が25%を超える企業は、増資に対する意思を株主総会で確認する手続を行うか、独立した第三者意見会などで意見を入手する必要があります。

300%ルールとは

希薄化率が300%を超える場合は、株主の権利を守ることは難しいと判断されるため、原則として禁止になります。

もし、禁止でありながら実行した場合は株主の権利を不当に制限したとして、上場廃止となります。

希薄化率の25%ルールが与えた影響

第三者割当増資は、取締役会の決議にて決定する資金調達の手段で、既存株主は25%ルールが登場するまでは反対する権利もありませんでした。

欧米では大規模な第三者割当増資を実施する場合は既存株主の了承を得るのが一般的でしたが、日本はそのようなルールがなく、ほかの国に比べて第三者割当増資を実施しやすいとして議論の対象となっていました。

そこで、第三者割当増資によって、株主の権利を不当に制限するリスクを抑制する効果を期待されて、25%ルールは2009年8月に導入されました。

2008年1月~2010年8月までのデータを参照すると、導入される前までは希薄化率が20%~25%の案件は全体の7%しかありませんでしたが、導入後は全体の20%まで増加。希薄化率25%以上の案件は全体の61%から規制後は36%まで減少しており、目論見通り株式の希薄化を抑制しています。

まとめ

以上が希薄化率の25%ルールの解説になります。

株式の希薄化とは、第三者割当増資によって株式の価値が下がる現象のことで、投資家にとって株式を手放すかどうかの判断材料となります。

希薄化率が高いほど新株を多く発行するということになり、企業は多くの資金を調達したいと考えています。

そのため希薄化率が高いというのは株価が下がる要因になりますが、一方で多くの資金を必要とする理由がポジティブな可能性もあります。

投資をする際は、1つの指標だけでなく、複数の情報と共に分析してみましょう。

文・野田幹太/提供元・The Motley Fool Japan

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