iDeCo(個人型確定拠出年金)とつみたてNISA(少額投資非課税制度)はどちらも積立投資の制度だ。併用できるのか気になるが、結論を言えば2つの制度の併用は可能だ。ただし、その際はそれぞれのメリットを活かして賢く使い分けたほうがよい。

目次
1.iDeCoとつみたてNISAの制度の違い
2.iDeCoとつみたてNISAのメリットとデメリット
3.iDeCoとつみたてNISAで買える商品の違い
4.iDeCoとつみたてNISAの賢い併用方法
5.併用すべき人、併用すべきでない人
6.iDeCoとつみたてNISAの併用は計画的に

1.iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(積立NISA)の制度の違い

iDeCoとつみたてNISAをうまく併用するために、それぞれの制度の違いを把握しておこう。

iDeCo(イデコ)はつみたてNISA(積立NISA)より節税効果が高い老後資金形成のための制度

iDeCoは老後資金形成のための年金制度の一種である。運用で得た利益は非課税だが、原則として60歳になるまで引き出すことができない。つみたてNISAとの大きな違いは、iDeCoでは掛金が全額所得控除されることだ。

iDeCoの加入対象年齢は20歳以上60歳未満だが、税制改正により加入年齢は65歳まで引き上げられる見通しだ。

また、iDeCoの加入には条件があり、iDeCo公式サイトの「カンタン加入診断」で確認できる。掛金は毎月5,000円以上からで、1,000円単位で設定できるが、年間の掛金限度額は勤務先や雇用形態によって異なり、年間14.4万円から81.6万円と幅広い。

60歳以降のiDeCoのお金の受け取り方は「一時金として一括でもらう」「年金として分割してもらう」「一時金と年金を組み合わせてもらう」の3つから選ぶことができる。

つみたてNISA(積立NISA)は運用益が非課税で少額から長期投資できる制度

つみたてNISAは少額からスタートできる長期投資を目的とした制度だ。

つみたてNISAの運用で得た利益はiDeCoと同様に非課税だ。投資信託の普通分配金や売却で得た利益は、通常は税率20.31%課税されるが、つみたてNISAならこれがゼロになる。

つみたてNISAの利用対象者は、その年の1月1日の時点で20歳以上の国内居住者だ。非課税で投資できる金額は、年40万円で20年間非課税のため、合計で800万円となる。

2.iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(積立NISA)のメリットとデメリット

iDeCoとつみたてNISAを併用するために、それぞれのメリットとデメリットを確認しておきたい。

iDeCo(イデコ)のメリット……掛金が全額所得控除される

iDeCoのメリットは掛金が全額所得控除されることだ。

iDeCoの掛金が課税対象所得から減額されるため節税効果が高い。たとえば月の掛金が2万円で所得税と住民税が両方10%の場合は、年間で2万円×12ヶ月×(0.1+0.1)=4.8万円の節税効果がある。

iDeCo(イデコ)のデメリット……60歳まで積み立てた資金を受け取れない

iDeCoのデメリットは、原則として60歳までお金を受け取ることができないことだ。

また60歳以降に受け取る際には退職所得控除などの税制メリットがあるが、会社の退職金と一緒に受け取る場合などに退職所得控除の上限金額を超えると課税されることがある。

つみたてNISA(積立NISA)のメリット……いつでも資金を引き出せる

つみたてNISAのメリットは、いつでも解約できることだ。60歳になるまで引き出すことができないiDeCoと違い、子供の進学などに合わせた資金作りにも利用できる。

つみたてNISA(積立NISA)のデメリット……スイッチングが自由にできない

つみたてNISAのデメリットはスイッチングが自由にできないことである。

スイッチングとは保有している商品を売却して別の商品を購入し入れ替えることだ。iDeCoでは保有する金融商品を変更することでスイッチングが可能だが、つみたてNISAでスイッチングを行うには商品を売却して別の商品を買い直すことになる。

ところがつみたてNISAの年間40万円という非課税枠は再利用できないため、商品を売却してもその購入額に相当する非課税枠は復活しない。そのため、既に非課税枠の40万円を使い切っていた場合はスイッチングができない。

3.iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(積立NISA)で買える商品の違い

iDeCoとつみたてNISAで購入できる金融商品はどちらも投資信託が主であるが、投資信託の資産クラス(アセットクラス)が異なる。

資産クラスとは投資対象の分類であり、国内や海外の株式・債券などがある。

iDeCo(イデコ)は様々な資産クラスの投資信託や元本保証の商品がラインアップ

iDeCoの対象商品は様々な資産クラスの商品が用意されている。対象の資産クラスは国内や海外の株式・債券・REIT(不動産投資信託)やコモディティ(金など)、バランス型などだ。このような元本変動型の商品の他に、元本保証の預貯金型の商品もある。

つみたてNISA(積立NISA)は株式を資産クラスにする投資信託が中心

つみたてNISAの対象商品は金融庁が定めた長期・積立・分散投資に適した投資信託に限定される。つみたてNISAの公募投資信託の要件は、販売手数料がゼロ(ノーロード)で、信託報酬は一定水準以下、分配頻度が毎月でないこと、信託期間が無期限または20年以上などだ。これらの要件を満たした公募投資信託と一部のETF(上場投資信託)が対象になり、投資初心者にとっても運用しやすい商品が多い。

つみたてNISAの対象商品の資産クラスは、いずれもリスクを取ってリターン(収益)を狙う株式への資産配分を主としたものが中心だ。

iDeCoではローリスクの安定運用からリターンを狙う運用まで資産配分の自由度が高いのに比べ、つみたてNISAの資産配分はリターン狙いになる傾向が強い。

投資初心者はリスクとリターンの理解が不足していることがあるため、リスクを抑えた安定運用を選択できるiDeCoのほうが初心者に向いているといえる。

4.iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(積立NISA)の賢い併用方法

つみたてNISAとiDeCoをどう併用したらいいだろうか。大切なのは目的に合った投資だ。

iDeCoは60歳まで受給できないため老後資金の形成に利用する。つみたてNISAはいつでも引き出すことができるため、老後資金の形成以外にも子供の進学や家のリフォームなどの様々な目的の資金形成に利用できる。

iDeCoとつみたてNISAの併用方法は主に2つある。iDeCoとつみたてNISAの両方を老後資金の準備に用いるか、iDeCoを老後資金の準備に利用して、つみたてNISAを他の資金とするか、である。

iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(積立NISA)の両方で老後資金を準備する

iDeCoとつみたてNISAを老後資金の準備目的で併用すれば、iDeCo掛金の限度額より多くの金額を老後資金の準備に充てることが可能だ。

会社員のケースで考えるとiDeCo掛金の限度額は企業年金等の加入状況により月額1万2,000円から2万3,000円で、たとえば企業年金等に加入していない会社員のiDeCo掛金の限度額は月額2万3,000円であり、これだけでは老後資金が不安な人もいるだろう。

つみたてNISAの年間投資枠は40万円、月額3万3,333円までの投資が可能である。iDeCoの掛金2万3,000円につみたてNISAの3万3,333円を追加すれば月額5万6,333円までを老後資金の準備に使える。

では、老後資金の形成目的でiDeCoとつみたてNISAを併用する際の積立配分はどうすべきか。

節税メリットを活かしたいのであればiDeCoの積立比率を上げる。iDeCoのほうが所得税控除による節税メリットが大きいからだ。

老後資金を形成したいが急な出費にも対応したい場合は、すぐにお金を引き出せるつみたてNISAの積立比率を上げるとよいだろう。

iDeCo(イデコ)で老後資金を準備し、つみたてNISA(積立NISA)で他の資金を準備する

iDeCoは老後資金の準備に利用して、つみたてNISAは家のリフォーム費用や子供の進学費用など別の目的で併用するのもよいだろう。

たとえば自営業者はiDeCoの掛金を月額6万8,000円まで拠出できる。これをフル活用して、さらに預金などで老後資金を準備すれば、つみたてNISAは別の資金の準備に利用できる。特に目的が決まっていなくても、いざという時のための資金として、つみたてNISAを利用してもいいだろう。

5.iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(積立NISA)を併用すべき人、併用すべきでない人

iDeCoとつみたてNISAを併用すべき人、iDeCoとつみたてNISAのどちらかだけを利用すべき人はどんな人だろうか。

iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(積立NISA)を併用すべき人……老後や10年以上先のライフイベントのために積み立てた資金を利用したい30代、40代の人

30代や40代の人が非課税制度を最大限活用して、老後と将来のライフイベントの出費などに備えたい場合はiDeCoとつみたてNISAを併用すべきだ。

iDeCoは60歳まで受給できないことや積立開始から受給までの期間が必要なことから、開始するのは30代や40代の人におすすめだ。20代の人は老後までの人生設計を考えていなければ、iDeCoの積立にお金を使うよりもスキルを伸ばすなどの自己投資にお金を使うほうが望ましいとも考えられる。もちろん20代の人でも老後までの人生設計を行い、老後資金の準備を考えているならばiDeCoとつみたてNISAの併用を開始してもよい。

iDeCoとつみたてNISAを併用した場合、60歳になる前のライフイベントの出費には、つみたてNISAで用意する資金を活用できる。

ただしつみたてNISAで用意する資金は10年以上の期間があったほうがよい。つみたてNISAは長期で株式を主体に投資する制度であり、一般的に利回りが安定するにはある程度の期間が必要になる。10年以上の期間があれば安定した利回りでの運用を実現できる可能性が高まる。

ライフイベントは10年以上先であっても、つみたてNISAと預金などを組み合わせて資金を準備すれば安心だろう。

iDeCo(イデコ)だけのほうがいい人……50代未満の人で数年後のライフイベントのためにお金を使う予定がある人

50代未満の人が老後資金とライフイベントの資金の準備を考えている場合、iDeCoだけがいいケースがある。

ライフイベントの時期が数年後など比較的近い場合には、iDeCoとつみたてNISAの併用よりもiDeCoと預金などを組み合わせたほうが確実だ。

つみたてNISAは数年程度では相場環境の変化などにより安定した運用ができないことがある。老後資金はiDeCoで準備し、数年後のライフイベントの資金は預金などでの準備を考えたい。

つみたてNISA(積立NISA)だけのほうがいい人……資金に流動性を持たせておきたい人、50代半ば以降の人、課税所得が低い人

iDeCoの資産を60歳まで受給できないことが不安な人や50代半ば以降の人は、つみたてNISAだけを利用するのがいいだろう。つみたてNISAだけであれば、必要に応じていつでも金融商品を換金して引き出すことができる。iDeCoの資産を60歳から受給するには10年以上の加入者期間が必要であり、50代半ば以降の人が加入しても60歳からの受給はできない。

また、所得が低く所得税・住民税が非課税もしくは少ない人や、住宅ローン控除により所得税・住民税が少ない人は、iDeCoではなくつみたてNISAの積立を優先したほうがいい。課税所得が低い人はiDeCoの所得税控除のメリットが小さく、掛金に対しての節税効果が低くなるからだ。iDeCoの所得税控除メリットよりも、60歳以降の受取時に課税されるデメリットのほうが大きくなる可能性がある。

6.iDeCo(イデコ)とつみたてNISA(積立NISA)の併用は計画的に

将来の資産形成を考えると、iDeCoとつみたてNISAを投資限度枠いっぱいに積み立てるのが理想だが、少額であっても継続して積み立てることで将来の資産形成は違ったものになる。

資産形成の目的や収入に合うようにiDeCoとつみたてNISAをうまく併用して資産形成を行いたい。資産の一部を株式に投資したい人などは、iDeCoと一般NISAの組み合わせを利用してもいい。

将来のライフイベントや必要なお金を試算するライフプランシミュレーションの一環としても、iDeCoやつみたてNISAの検討はおすすめだ。

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松本雄一
執筆・松本雄一
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。
外資系コンピューター会社にてカスタマーサポート・開発・セキュリティ対策などを経験後に独立。自らの投資経験をもとに株式や投資信託などの投資情報を発信している。興味のある分野はフィンテックや新しい金融商品など。

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