つみたてNISAで資産運用をするときは、長期・積立・分散投資に適した181本の投資信託から選択することになる。初心者には選択肢が多く、どう組み合わせればいいか迷うだろう。初心者のリスク管理に向いているバランスファンドでつみたてNISAのポートフォリオを組み、リスク管理をする方法について解説する。(※すべて2020年6月時点)

目次
1.つみたてNISAの対象商品は投資信託のみ
2.つみたてNISAの投資信託は3種類
3.つみたてNISAの投資対象は4種類
4.初心者はバランスファンドを検討
5. バランスファンドはGPIFを参考に
6.リスク許容度別の組み合わせ例
7.つみたてNISAの組み合わせの鍵
8.実際につみたてNISAを始めてみる

1.つみたてNISA(積立NISA)の対象商品は長期投資に適した投資信託のみ

つみたてNISAの対象商品の条件 つみたてNISAの対象商品は、安定的な資産形成を図れるように金融庁が定めた要件を満たす投資信託のみだ。対象商品の要件は以下である。

  • 販売手数料がかからないこと(ノーロード)
  • 信託報酬が低いこと(国内株のインデックス型同値信託の場合は0.5%以下)
  • 分配頻度が毎月でないこと
  • ヘッジ目的の場合などを除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと

    つみたてNISAでは低コストで分かりやすい商品設計であったり、過度なリスクを避けていたりする投資信託が対象になる。

2.つみたてNISA(積立NISA)で取り扱っている投資信託は3種類

つみたてNISAで取り扱っている投資信託には、大きく分けて次の3種類がある。 つみたてNISAの対象投資信託

・(1)インデックス型……156本

日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)など特定の指数の値動きに連動して運用する投資信託。

・(2)アクティブ型……18本

ファンドマネージャーやアナリストなど投資の専門家が対象企業の調査・研究を行い、株価指数などのベンチマーク(運用成績の基準となる指標)を上回る運用成果を目指す投資信託。調査・研究を行うので、インデックス型より運用コストが高くなる。

・(3)ETF……7本

証券取引所に上場しているインデックス型の投資信託で「上場投資信託」とも呼ばれている。株式と同じように市場で取引できるのが特徴だ。

3.つみたてNISA(積立NISA)の投資対象は大きく分けると4種類

つみたてNISAの投資対象になる資産は基本的に株式である。債券や銀行預金などの低リスクの資産は原則として対象外だ。投資対象資産は、だいたい次の7資産に分けられる。

  • 国内株
  • 先進国株
  • 新興国株
  • 国内債券
  • 先進国債券
  • 新興国債券
  • REIT(不動産)

    各資産のリスク・リターンは簡単に説明すると次の図のようになる。リスクが小さければリターンが小さく、リスクが大きければリターンも大きくなる。

※編集部作成

この7資産のうち、つみたてNISAの投資対象になるのは国内株、先進国株、新興国株のみである。つみたてNISAの投資対象はこれらの株式3資産にバランスファンドを加えた4種類だ。

  • 国内株
  • 先進国株
  • 新興国株
  • バランスファンド

    つみたてNISAのバランスファンドとは、複数の資産を組み合わせて構成される投資信託である。バランスファンドを1本保有するだけで、複数資産に分散投資を行える。

    つみたてNISAは原則として株式の投資信託にしか投資できない。つみたてNISAのポートフォリオに債券や不動産(REIT)も組み合わせたい場合は、このバランスファンドを活用しなければならない。

4.つみたてNISA(積立NISA)の初心者はまずはバランスファンドを検討

ポートフォリオ(資産配分)を決めるには、債券や株式の比率を考える必要があるが、投資初心者にとって、リスクとリターンを考えながら資産配分を決めるのは難しいだろう。そのときに有効なのが、つみたてNISAのバランスファンドを購入する手法だ。バランスファンドであれば1つの投資信託を購入するだけで国際分散投資ができるからだ。

つみたてNISA(積立NISA)のバランスファンドは商品ごとに資産の組み合わせが異なる

つみたてNISAの対象となるインデックスファンドは156本あるが、このうち76本がバランスファンドである。バランスファンドにはさまざまな種類がある。

バランスファンドは商品ごとに資産配分が異なっており、つみたてNISAの対象商品では2つから8つの資産に分散投資を行うものがある。また全ての資産に同じ比率で投資を行うタイプや特定資産の投資比率を高めたタイプなど商品ごとに特色がある。

つみたてNISA(積立NISA)のバランスファンドはリバランスを行ってくれる

バランスファンドの便利なところは、リバランスを自動で行ってくれることだ。リバランスとは、価格変動などによって株式と債券の比率のバランスが崩れたときに、自動的に元の資産配分に戻してくれることだ。バランスファンド以外は自分でリバランスを行わなければならない。

つみたてNISA(積立NISA)でリスクを下げるにはバランスファンドの活用が重要

つみたてNISAでは、原則として株式の投資信託しか選択できない。バランスファンドに投資を行わなければ株式の組み合わせでポートフォリオを作るしかなく、どうしてもリスクが高くなってしまう。つみたてNISAでバランスファンドへの投資を行えば、債券やREITを組み合わせられるので、リスク軽減を行えるのだ。

バランスファンドは基本的に株式比率が低い商品(債券比率が高い商品)のほうが低リスクだ。資産種類が多いほど分散効果が働き、特定資産の値動きに左右されづらくなるが、新興国資産が含まれる8資産型などの場合はリスクが上昇するケースもある。

つみたてNISA(積立NISA)のバランスファンドにも注意点がある

バランスファンドは1本で国際分散投資を行える非常に便利な商品であるが、投資資金が複数資産に配分されているために、資産の状況把握が複雑になる。そのためつみたてNISAでバランスファンドに投資するなら、一つの資産だけでなく複数資産に目を向ける必要がある。

株式が大きく値上がりしている状況では株式の投資信託のみを保有している場合より、値上がり幅は緩やかになる。もちろん、その分下落時の値動きも緩やかになる。バランスファンドの商品特性を理解したうえで、つみたてNISAのポートフォリオに組み合わせることが重要だ。

5.つみたてNISA(積立NISA)のバランスファンドはGPIFの資産の組み合わせを参考に選ぶのも手

つみたてNISAは「長期・積立・分散」投資を基本とした金融商品だが、同じように年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も「長期的な観点から安全かつ効率的な運用」を行うように基本ポートフォリオを定めている。

つみたてNISAの運用方針と似ているので、GRIPの基本ポートフォリオを参考に資産配分を決めるのもいいだろう。GPIFの基本ポートフォリオは次のようになっている。
 

※筆者作成

2020年4月より、GPIFの基本ポートフォリオでは国内債券、国内株式、外国債券、外国株式それぞれに25%ずつ資産配分がされている。債券と株式、国内資産と外国資産を半分ずつ保有することにより、リスクのバランスを取っている。

GPIFの資産の組み合わせに近いバランスファンド

つみたてNISAの対象商品のうち、GPIFの資産配分を参考にバランスファンドを選ぶ場合の例として、DCニッセイワールドセレクトファンドという商品を例にとって説明しよう。

・DCニッセイワールドセレクトファンド(標準型)

運用会社……ニッセイアセットマネジメント
基準価額……2万1711円(2020年6月9日時点)
純資産総額……339億8,300万円
信託報酬……0.154%(税込)

各資産配分のポートフォリオは以下のようになっている。
 

※筆者作成

DCニッセイワールドセレクトファンド(標準型)は国内外の株式および債券市場を投資対象とし、バランス運用を行うファンドだ。GPIFと多少比率は変わるが、株式比率50%、債券比率(短期金融資産含む)50%という構成は同じである。

過去1年間の騰落率は7.5%となっている(2020年2月21日時点での運用報告書による)。

DCニッセイワールドセレクトファンドではこの標準型を基本として、リスクを取りたいなら「株式重視型」、リスクを抑えたいなら「債券重視型」を選択できる。

・DCニッセイワールドセレクトファンド(株式重視型)

運用会社……ニッセイアセットマネジメント
基準価額……2万5000円(2020年6月9日時点)
純資産総額……170億1,500万円
信託報酬……0.154%(税込)

各資産配分のポートフォリオは以下のようになっている。
 

※筆者作成

「株式重視型」での株式の比率は70%(国内株式40%+外国株式30%)。積極的にリスクをとってリターンを目指したい人向けだ。

過去1年間の騰落率は9.6%だ(2020年2月21日時点での運用報告書による)。標準型より株式比率が高い分、相場上昇時には高いリターンを得られることが分かるだろう。

・DCニッセイワールドセレクトファンド(債券重視型)

運用会社……ニッセイアセットマネジメント
基準価額……1万8376円(2020年6月9日時点)
純資産総額……148億9,000万円
信託報酬……0.154%(税込)

各資産配分のポートフォリオは以下のようになっている。
 

※筆者作成

「債権重視型」では株式比率が30%に抑えられているので、安全性が高い運用に期待できるファンドである。つみたてNISAでリスクを抑えたい人は、こちらのバランスファンドを選べばよい。

過去1年間の騰落率は5.4%だ(2020年2月21日時点での運用報告書による)。リスクを抑えている分、相場が軟調なときには標準型や株式重視型と比べて安定的な値動きになる。

このように、GPIFの資産配分などを参考にしながら、自分にあったバランスファンドを探したい。

6.つみたてNISA(積立NISA)のリスク許容度別・銘柄の組み合わせ例

ここまではバランスファンドの選び方を中心に見てきたが、つみたてNISAで自分に合ったポートフォリオを組むには、複数の投資信託を組み合わせることも重要だ。

リスク許容度別にバランスファンドを活用したつみたてNISAのポートフォリオの例を紹介するので、これらを参考にしながら最適な組み合わせを探してほしい。

リスク許容度が大きい人向けの組み合わせ例

収入があり投資に回せる資金が多く、リスクをとって利益を得たいリスク許容度の高い人は株式の比率を少し高めたつみたてNISAのポートフォリオを組むと良いだろう。組み合わせ例は次の通りだ。

  • バランスファンド(8資産均等型)……70%

    「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」(三菱UFJ国際投信)

  • インデックスファンド(外国株式型)……20%

    「楽天・全米株式インデックス・ファンド」(楽天投信投資顧問)

  • アクティブファンド(国内株式型)……10%

    「ひふみプラス」(レオス・キャピタルワークス)

※筆者作成

この組み合わせでは株式比率が約56%、債券比率が約26%、REIT比率が約18%になる。株式比率が高めであり、相場上昇時には高いリターンが期待できるだろう。

バランスファンドの「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」を主軸に据え、投資に安定感を生む一方で、外国株式型のインデックスファンドである「楽天・全米株式インデックス・ファンド」を組み合わせ、株式比率を高めている。

さらに国内の中小型株式に投資するアクティブファンドである「ひふみプラス」を組み合わせて、期待リターンを高めている。アクティブファンドの組み入れは好みやリスク許容度によって選択するのはよいが、つみたてNISAでは、あまりアクティブファンドの比率を高め過ぎないように注意しよう。

リスク許容度が中程度の人向けの組み合わせ例

つみたてNISAである程度のリターンは得たいが大きな損失を出すことは避けたいという人は、リスク資産である株式やREITと債券の比率が半々になるようなポートフォリオを基本としよう。そのような資産配分のバランスファンドを探してもよいが、組み合わせによって理想のポートフォリオが作れる。

  • バランスファンド(8資産型)……70%

    「Smart-i 8資産バランス 安定型」(りそなアセットマネジメント)

  • インデックスファンド(外国株式型…… 30%

    「楽天・全米株式インデックス・ファンド」(楽天投信投資顧問)

※筆者作成

この組み合わせは株式比率が約45%、債券比率が約53%、REIT比率が約2%になる。リスク資産である株式やREITと安定資産である債券の比率がほぼ半々のポートフォリオだ。

主軸はバランスファンドの「Smart-i 8資産バランス 安定型」だ。債券比率が高めのバランスファンドの比率を大きくすることで、ポートフォリオ内の安定資産比率を調整している。さらに外国株式型のインデックスファンドである「楽天・全米株式インデックス・ファンド」を組み合わせることで、全体のバランスも整えた。

GPIFと同じ資産配分の4資産型バランスファンドへ投資すれば、新興国市場を無視することになる。このように8資産型のバランスファンドを組み合わせれば、リスク資産と安定資産の比率が半々でありながら、ポートフォリオ内に新興国市場を取り込むといったことも可能だ。

リスク許容度が小さい人向けの組み合わせ例

つみたてNISAの投資で損失をなるべく避け、それでも多少のリターンが欲しいという人は、債券比率を高めた以下のようなポートフォリオを作成しよう。

  • バランスファンド(4資産型)……90%

    「三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)」(三井住友DSアセットマネジメント)

  • インデックスファンド(外国株式型)……10%

    「ニッセイ外国株式インデックスファンド」(ニッセイアセットマネジメント)

※筆者作成

この組み合わせは株式比率が約37%、債券比率が約63%(短期金融資産含む)で、安定資産である債券がポートフォリオの約3分の2を占めている。またREITや新興国資産を含んでいないので、その部分でもリスク低減が図られている。

主軸はバランスファンドの「三井住友・DC年金バランス30(債券重点型)」だ。一方で、外国株式型のインデックスファンドである「ニッセイ外国株式インデックスファンド」を組み合わせることにも着目したい。リスク低減を担保しつつも、期待リターンを少しでも高めるよう調整している。

7.つみたてNISA(積立NISA)はバランスファンドを組み合わせることが重要

つみたてNISAではバランスファンドを活用しなければ、必然的に株式100%のポートフォリオができあがってしまう。バランスファンドをポートフォリオに組み込めば、組み合わせの例で紹介したように、つみたてNISAで理想の資産配分に近付けられる。

つみたてNISAの組み合わせを考えるときには、つみたてNISAの対象であるバランスファンドを有効に活用したい。

8.実際につみたてNISA(積立NISA)を始めてみる

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樋口壮一
執筆・樋口壮一
新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。AFP
新卒で証券会社に入社後、10年間リテール営業、ホールセール営業を経験。現在は事業会社の営業企画部門に努める傍ら、個人として投資を行い、マーケットに携わる。AFP

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