しかし判例では、解雇の具体的な要件が決まっている。特に1979年の東京高裁判決の整理解雇の3要件が法律と同等の拘束力をもち、会社がつぶれるまで解雇できない。

  1. 事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむを得ない
  2. 従業員を他の事業部門に充当する余地がない
  3. 具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づく

「金銭解雇」の法制化が雇用流動化の必要条件

これに対して外資系企業では、日本でも割増し退職金(severance pay)を出して同意を得る金銭解雇が普通である。人事部が従業員と話し合って「訴訟を起こさない」という同意書を書かせる。

金銭解雇のイメージ(チャットGPT)

日本でも中小企業では、解雇は日常的に解雇は行われている。大企業の経営者が訴訟を恐れて解雇しないだけである。雇用を流動化する上で「解雇規制」は大した問題ではなく、司法の温情主義が最大の障害なのだ。

終身雇用にせよ年功序列にせよ、法律で決まっているわけではなく、正社員という暗黙の規範で決まっているだけで法的根拠はない。だからたとえば労働基準法で「1年分の退職金を払えば解雇できる」という規定を明文化し、整理解雇の判例を上書きすればいいのだ(労働契約法16条は廃止)。

こういう改革は、第1次安倍内閣のとき経済財政諮問会議が打ち出したが、野党や労働組合だけでなく厚労省も反対してつぶれた。それ以来、雇用流動化も金銭解雇も政治のタブーである。もし出たら国会は大荒れになるだろうが、それぐらいしないと日本経済の停滞は終わらない。