ネット証券で信用取引が安い証券会社はどこなのだろうか?ネット証券業界では手数料の無料化の流れが進んでいて、1日の約定代金や約定回数にかかわらず、信用取引手数料が無料というネット証券も登場している。株式投資初心者でもわかりやすいようランキング形式で紹介していこう。
目次
1,信用取引――現物取引をワンランクアップする取引
2,信用取引コストの安いネット証券ランキング
3,ランキングTOP5の証券会社の特徴は?
4,信用取引の主なメリット4つ
5,信用取引の2つのデメリット
6,SBI証券と楽天証券の信用取引の手数料や特徴は?
7,信用取引手数料の安さに加えて、各種手数料の安さも確認する
1,信用取引とは?――現物取引をワンランクアップする仕組み
信用取引とは、手元にある資金を証券会社に預け入れ、預け入れた資金の約3.3倍の金額の取引をすることである。信用取引制度が導入された目的は、株式の流通量を増やして、市場での公正な価格形成を図るためだ。
資金や株式を借りる仕組みができたことで、資金が潤沢でない投資家にも取引参入のチャンスが増えて、少しの売買高でも株価が急騰あるいは急落するリスクを軽減できるようになった。
信用取引は、手持ち資金よりも多くの金額を動かせるだけでなく、「空売り」と呼ばれる先に株式を売却しておいて後から買い戻す取引ができるというメリットがある。
現物取引では下落相場で投資をすると損をするだけだが、上昇相場でも下落相場でも儲けを出せるのが信用取引の良さだ。
最近では、コロナウイルスによる下落相場で信用取引によって大きな利益を出した投資家も多く見られた。
2,信用取引コストの安いネット証券ランキング ライブスターとauカブコムに注目
信用取引を始める際に気になるが、手数料だ。ここからは、信用取引コストの安さの目安となるネット証券の「1注文の約定代金ごとの信用取引手数料」に注目して、ランキング形式でコストの安いネット証券を紹介しよう。
5,ランキングTOP5の証券会社の特徴は?
通常の信用取引手数料は、主なネット証券だけを見ても若干の違いがある。
各社が独自に提供する信用取引サービス、手数料0円や優遇コースの適用条件、さらに金利や貸株料もさまざまだ。上記の信用取引手数料比較表でネット証券を絞り込んだら、各社の取引手数料以外の手数料や信用取引サービスの違いについてもしっかりチェックしよう。
第1位、ライブスター証券(新:SBIネオトレード証券)――手数料の安さならここ、信用取引でも業界最安値
手数料コースを問わず、現引き・現渡しを含め、全銘柄の信用取引手数料がすべて0円というから驚きだ。
安いのは、取引手数料だけではない。同社公式ホームページによれば、一般信用取引の通常の買方金利も、他のネット証券の制度信用金利より低く設定されているという。キャンペーンも適宜実施されており、通常より低い金利が適用されることも多い。
買方金利 (一般) |
買方金利 (制度) |
|
ライブスター証券(新:SBIネオトレード証券) | 2.75% | 2.30% |
SBI証券 | 2.80% | 2.80% |
楽天証券 | 2.80% | 2.80% |
マネックス証券 | 3.47% | 2.80% |
松井証券 | 4.10% | 3,10% |
さらにライブスター証券(新:SBIネオトレード証券)では、新規口座開設で2ヶ月間現物株式の手数料も無料になるキャンペーンも開催中だ。
すでに他の証券会社で現物取引や信用取引をしているとしても、口座開設を検討してみるといいだろう。
第2位,LINE証券――新鋭のスマホ証券でも信用取引の売買手数料0円!
バーゲンセールなどで話題のLINE証券も2020年5月から信用取引の取り扱いを開始。制度信用のみの取り扱いで、売買手数料は0円に設定されている。LINE証券の口座を開設してれば、書類の追加提出なしで信用口座が開設できるため、煩わしい手続きがないのもうれいしところだ。
LINE証券の独自の特徴は、LINEアプリで情報取集から売買までできるというという点だ。スマートフォンでの操作性の高さが強みであり、スマホでの取引をメインで考えているならLINE証券の信用取引もおすすめだ。
さらに2020年10月30日15:00まで現物売買手数料、信用金利、貸株料が0円という1周年記念キャンペーン第二弾を開催中。「これまで空売りなどはしたことないし、コストがかかるのが心配」といった信用取引初心者でも気軽に挑戦できるキャンペーンなので、ぜひともチェックしてもらいたい。
第3位、auカブコム証券――信用取引手数料はすべて0円、誰でもどんな取引でもお得
ネット証券における信用取引手数料0円の適用条件と範囲が拡大する中で、信用取引手数料完全0円を打ち出している。信用取引手数料を無料にするために、約定代金を計算しながら取引する手間がかからないのがうれしい。信用取引を試しにやってみたいという人も、手数料0円なら気軽に始められるだろう。
ただしauカブコム証券でも、お金を借りた場合の金利や株を借りた場合の貸株料、品受・品渡(一般的には、「現引き・現渡し」と呼ばれる。上述の「信用取引ならではの仕組み/現引きと現渡し」参照)手数料など、信用取引特有の手数料は発生する。
反対売買で決済すれば取引手数料は0円なので、とにかく安いコストで信用取引を始めてみたいなら、auカブコム証券で新規建を行い、その日の大引けまでに建玉を反対売買することを基本にするといいだろう。
第4位、DMM.com証券 株――とにかくシンプルに手数料が安い
手数料の安さで有名なDMM.com証券 株は、信用取引手数料でも安さを追求している。手数料体系は1約定ごと手数料コースだけで、約定代金300万円以下の手数料が88円(税込)、300万円超なら0円というシンプルさ。
さらに、当日の信用新規建約定代金合計が5,000万円以上などの日次判定、もしくは1ヵ月の信用新規建約定代金合計が5憶円以上などの月次判定でVIP条件を満たすと、翌営業日あるいは翌月の信用取引手数料はすべて0円になる。
VIPコースに適用されると、一般信用と制度信用のどちらでも、買方金利が2.7%から2.0%(年率)に引き下げられる。
手数料のシンプルさとわかりやすさで、誰が使っても煩わしさがない。手持ちの資金が多くなくても安く信用取引ができるが、資金が潤沢ならもっとお得に信用取引ができる便利なネット証券だ。
第5位、GMOクリック証券――VIPプランなら手数料0円
GMOクリック証券の信用取引では、1注文ごとに手数料のかかる「1約定プラン」と1日の合計約定金額に応じて手数料が決まる「1日定額プラン」の2種類のプランから好きな方を選ぶことができる。
通常の手数料体系では格安という訳ではないが、DMM.com証券同様「VIPプラン」が適用されると、取引手数料が無料になるだけでなく、金利も1.8%という最高スペックの信用取引口座に変わるのがGMOクリック証券の特徴だ。
VIPプランの適用条件もDMM.com証券より緩いので、大口での信用取引を考えているならGMOクリック証券がおすすめだ。
信用取引を初める前に初心者が覚えていきたい5つのこと
信用取引にあって現物取引にはない特徴的な概念や仕組みのうち、以下について最低限理解しておきたい。
1,建玉(たてぎょく)……未決済のまま残っている契約の総数
新規に約定した信用取引契約が、反対売買や現引き・現渡しされずに残っている状態のこと。証券会社から資金や株式を借りて行う取引であるため、借りた資金や株式を期限内に返すことが前提となる。
未決済の状態で、資金を借りて買い建てている株は「買い建玉」、株式を借りて売り建てている株は「売り建玉」と呼ばれる。
2,現引き(げんびき)と現渡し(げんわたし)……返済方法の種類
どちらも信用取引の決済(返済)方法のことであり、現とは現物株式を指す。
「現引き」とは、信用買い(資金を借りて株を買い建てる=買い建玉)の決済時に、反対売買するのではなく「現引き」を選択し、買い建玉と同等の資金で返済して、株式を保有すること。
買い建玉が今後値上がりすると予想される場合に、現金で決済して、現物株式を受け取るケースが想定される。
「現渡し」とは、信用売り(株を借りて、株を売り建てる=売り建玉、空売り)の決済時に、反対売買をせず「現渡し」を選択して、保有している現物株式で決済すること。
利用方法としては、株主優待目的で大量に保有する株が値下がりすると予想される場合に、信用売りで現渡しを選択して、売り建金額を受け取り、現物株式の一部で決済するケースが考えられる。
3,委託保証金……取引のもとになる資金
手元にある資金を委託保証金として証券会社に差し入れるお金のこと。手持ちの現金以外にも、株式あるいは国内株式投資信託などを保証金代用証券として預けることもできる。
現金の場合は100%、代用有価証券の場合は時価に一定の掛目をかけた評価額を保証金の金額とする。
信用取引に必要な「最低保証金額」は30万円、あるいは建玉の30%の保証金が必要であると定められている。
4,委託保証金維持率と追証(おいしょう)……評価額が下がったときに必要になることも
建玉約定代金に対する委託保証金の割合は「委託保証金維持率」と呼ばれており、証券会社ごとに20%~25%程度に定められている。
相場の変動によって評価額が下がり、委託保証金額が定められた委託保証金維持率を下回ると、追加委託保証金、つまり「追証(おいしょう)」を差し入れる必要が生じる。
建玉自体に評価損が出た際には、委託保証金から差し引くことも定められている。したがって、相場の急変によって、差し入れている代用有価証券の評価額が値下がりし、同時に建玉の評価損が発生すると、一気に維持率を下回る可能性がある。
5,制度信用取引と一般信用取引……信用取引の2つの制度
信用取引には、取引所が対象銘柄を選定する「制度信用取引」と、証券会社ごとに条件が異なり、全上場銘柄が対象となる「一般信用取引」の2種類がある。
取引所が運用する制度信用取引はすべて、返済期限が最長6カ月に定められている。制度信用取引対象銘柄は、資金と株式のどちらも借入可能な「貸借銘柄」と、資金のみ借入可能な「制度信用銘柄」に分類される。
制度信用取引の貸借銘柄には、空売りニーズが高まった際に、株式調達コストである「逆日歩(ぎゃくひぶ)」が別途発生する可能性がある。
一般信用取引は、信用に基づいて証券会社と顧客との間で行われる信用取引である。返済期限や金利、貸株料などの諸条件は証券会社ごとに設定されているため、証券会社によって違いがある。
4,信用取引の4つのメリット
信用取引は現物取引の弱点を補うよう働きをもつ取引である。
とりわけ、「手元資金の約3.3倍の金額の取引ができる」、「下落局面でも利益を狙える」、「同じ保証金を使って、1日に何度も信用取引を繰り返すことができる」、「眠っている株式を代用有価証券として差し入れて有効活用できる」といったメリットがある。
メリット1,手元資金の約3.3倍の金額の取引ができる
上述の「信用取引ならではの仕組み/委託保証金」で触れたように、信用取引では証券会社に30万円以上の委託保証金を差し入れると、その委託保証金額の約3.3倍の金額の取引ができる。
手元に余裕資金が30万円しかなかったとしても、その30万円を使って上限99万円もの取引が可能になる。
証券会社から60万円を借りて、株価1,000円の株式を900株、90万円で信用買いしたケースを取り上げてみよう。
株価が1,200円に値上がりした時に、買い付けた全株式を売却すると108万円で売却できる。108万円から借りた60万円を返済に充てると、残額は48万円になる。委託証拠金の30万円を差し引くと、儲けは18万円である。
株価1,000円の現物株式を300株、投資総額30万円で購入した場合に、1,200円に値上がりした時点で売却すると、値上がり益は6万円だ。
信用取引は、現物株式と同じ資金を使って、およそ3倍の儲けを出せるので、資金効率がよい。
メリット2,下落局面でも利益を狙える
株価が下落局面にある場合には、証券会社で株を借りて「信用売り」で取引を始めて、株価が十分下がったら買い戻す。証券会社に株を返済し、信用売りと反対売買の差額が利益となる。
現物株式の取引では、株価の下落局面にあっては利益を得るのが難しいが、それができるのが信用取引ならではのメリットだ。
メリット3, 同じ保証金を使って、1日に何度も信用取引を繰り返すことができる
証券会社に預け入れる委託保証金を使って、信用取引を行っても、いったん決済してしまえば、その日のうちに同じ委託保証金で信用取引の新規建て注文を出すことができる。1日にのうちに何回同じ銘柄を取引しても、何回取引しても、その前の信用取引が決済されていれば問題ない。
1日のうちに、同一資金を使って、同一銘柄の売買を繰り返すことができない現物取引との大きな違いだ。
メリット4, 眠っている株式を代用有価証券として差し入れて有効活用できる
株価の下落によって塩漬けになっている株式や、株主優待や配当目的で長期保有を予定している株式があれば、信用取引の代用有価証券として証券会社に差し入れることができる。
眠っている保有株式をもとにして、新規の信用取引の注文を出して利益を得ることができるので、保有株式の有効活用ができる。
5,信用取引の2つのデメリット
メリットが多い信用取引であるが、現物取引にはないデメリットもあるので、十分認識しておいたほうがよいだろう。
デメリット1,金利、貸株料、逆日歩など、信用取引特有の費用が発生する
信用取引の基本は、委託保証金を担保として差し入れることで、証券会社からお金や株式を借りて取引を行うことだ。そのため信用取引には、取引手数料とは別に、お金や株式の貸借や特別な事務処理に関わる費用が発生する。
- お金を借りる際に発生する「金利」
- 株式を借りる時に課せられる「貸株料」
- 制度信用制度で品薄になった株式を調達するためにかかる費用「逆日歩」
- 買い建玉が権利確定日をまたぐ時に発生する「権利処理等手数料」
などが発生する。信用取引手数料が割安、もしくは無料の証券会社もあるが、それに金利、貸株料、逆日歩などの費用が上乗せされることも忘れないでほしい。
デメリット2,株価下落による損失発生のスピードや幅も現物取引の約3倍
信用取引は保証金の最大3.3倍の金額の取引ができるため、現物取引の約3倍もの利益を期待できる。その反面、株価が下落すると、そのスピードも損失額も現物取引の約3倍になる。
そのため注意を怠ると、あっという間に建玉金額や代用有価証券の価値が目減りして、委託保証金維持率を下回ってしまう。維持率を下回ると、取引の継続のために追証(追加の委託保証金)を差し入れる必要が出てくる。
追証の発生にかかわらず、相場の暴落によって、差し入れた保証金以上の損失額が発生するリスクもある。現物株式の取引では、現物株式の価値以上の損失額は発生しないが、信用取引では保証金を超える損失額の発生で、損失額の補填が必要になる可能性も十分理解しておいたほうがよい。
6,SBI証券と楽天証券の信用取引の手数料や特徴は?
SBI証券と楽天証券は、信用取引の手数料ランキングではTOP5に入らなかったが、2大人気ネット証券の特徴はやはり押さえておきたい。
SBI証券の特徴――大口の信用取引なら断然安い
現物取引の手数料は業界最低水準だが、信用取引手数料も安い。1回の約定代金が5,000万円以上の大口取引なら、1注文ごと手数料制のスタンダードプランでも手数料0円、さらに翌営業日の信用取引手数料もすべて0円になる。
1日定額制のアクティブプランで信用取引をすると、1日50万円以下の少額でも、1日5,000万円以上の大口でも0円。信用取引なら、国内ETF・ETN・REITの手数料も0円。さらにデイトレードの一般信用取引なら、往復手数料も0円だ。
取引手数料以外にも各種手数料が発生する信用取引を大口で取引するなら、断然お得なネット証券と言える。
楽天証券の特徴――大口優遇に魅力あり
株式の現物取引だけでなく、信用取引でも1注文ごと手数料制の超割コース、いちにち定額コース、どちらも基本手数料自体が安く設定されている。
1日の新規建約定代金合計が5,000万円以上や、1ヵ月の平均貸株残高5,000万円以上などの判定基準を1つでも満たせば大口優遇の対象となり、翌営業日あるいは翌月から3ヵ月間、約定代金10万円以下の現物取引手数料とすべての信用取引手数料が0円になる。
大口優遇の判定基準は、信用取引以外に投資信託の月平均残高も条件に加えられている。大口優遇の対象になると、ポイント付与率が通常の1%から2%にアップするのも、楽天会員にはうれしいポイントだ。
現物取引と信用取引を合算できるいちにち定額コースには、デイトレード割引もある。1日で手仕舞いすれば返済手数料が無料になるので、デイトレードのコストを削減できる。
7,信用取引手数料の安さだけでなく、各種手数料の安さも確認しよう
信用取引は、新規の買い建て・売り建てと反対売買もしくは現引き・現渡しがワンセットであり、往復の手数料が必要になる。そのため、取引手数料が安いことは必要最低条件と言える。
また信用取引は現物株式取引と違って、証券会社から資金や株を借りる取引なので、金利や貸株料などの諸費用も発生する。信用取引を始めるなら、取引手数料の安さだけでなく、手数料が無料になる条件や金利・貸株料、その他の諸費用についても必ず比較しよう。
信用取引のメリット・デメリットを把握し、コストが安い証券会社を利用することで、株式投資で成功する確率を上げることができる。リクスをしっかり把握しつつ、上手に利用してほしい。
実際に信用取引をを始めてみる
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