あらゆる哺乳類において、こうした極端な成長の遅さは、これまで絶滅した化石種でのみ知られていましたが、現在生きている種では世界初の発見だといいます。

では、アマミノクロウサギはなぜこんなにゆっくりと成長するのでしょうか?

なぜ成長速度は遅いのか?

アマミノクロウサギの成長速度の遅さは、島という隔離された環境に秘密があります。

日本列島やその他の大陸に生息するウサギは、周囲に天敵があまりにも多く、常に捕食対象として狙われ続けています。

いつ死ぬかもわからない状況の中で、ウサギたちは「早く成長して、たくさん子供を産む」という生存戦略を進化させました。

しかし島という隔離された特殊な環境には天敵が少なく、餌資源も限られているため、アマミノクロウサギも多産多死ではなく「少ない子供を確実にじっくり育てる」という生存戦略を発達させたと考えられるのです。

実際に、アマミノクロウサギは一度の出産で1匹の子供しか産まないとされています。

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Credit: 東京大学 – 島暮らしのアマミノクロウサギは「ゆっくり成長」 ―成熟までの期間が近縁種の5倍、現生哺乳類では世界初の発見―(2025)

それから成長速度とは別に、アマミノクロウサギの骨組織は、他のウサギ類に比べて、非常に緻密で頑丈であることもわかりました。

これは島の急峻な地形で効率的に移動するための骨構造の適応だと考えられます。

今回の研究は、環境によって成長スピードが大きく変わることを明らかにした貴重な成果です。

その一方で、アマミノクロウサギのように子供の数が少なく、成長速度も遅いということは、環境が変われば、繁殖数の減少が急激に進み、他のウサギ類と比べて絶滅リスクが高まる危険性があることを意味します。

これを踏まえて、アマミノクロウサギの効果的な保護活動を確立する必要があるでしょう。

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参考文献

島暮らしのアマミノクロウサギは「ゆっくり成長」 ――成熟までの期間が近縁種の5倍、現生哺乳類では世界初の発見――
https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/11526.html