この問題を、私は神奈川県にとって対岸の火事として楽観視すべきではないと思う。神奈川県内にも外国人比率の多い自治体はあるが、住民や自治体が協力しながら大きな問題には発展していないと聞いている。

しかし難民申請の制度を悪用し地域と対立する事例が神奈川県では発生しないとは言い切れないし、川口市でのクルド人問題が続けば合法的に入国し真面目に生活している外国人住民へのイメージ悪化にもつながるのである。

何か大きなトラブルが起きると、世論は外国人受入れと外国人拒絶の二項対立に陥りやすい。しかし、人口減少下の日本で社会機能を継続的に機能させていくためには、その対立を越えた社会像を提示することが政治の責任となる。

共生社会の構築とは単なる美しいスローガンではなく調和ある社会を築くための困難な道のりであり、その現実を受け入れなければ持続可能な発展は成し得ない。まずは本書で赤裸々に描かれた事例を研究することが先決であろう。

『「移民」と日本人』