体温があって、外界の揺らぎをもろに受ける、いわゆる生々しい“温かみ”を持つ存在として描かれています。
それにもかかわらず、これまでの実験が狙ってきたのは温度や雑音を極限まで下げた“冷たい猫”でした。
これは仕方のないことでもあります。
量子の干渉現象はちょっとした熱エネルギーや環境の乱れですぐに壊れてしまうというのが、長い間の定説だったからです。
あたかも冷凍庫の扉をうっかり開けっぱなしにするとアイスクリームがすぐ溶けてしまうように、ちょっとでも熱が入り込むと量子の面白さが台無しになる――誰もがそう信じていました。
ところが近年、わざわざ冷やしこまなくとも、熱や雑音を抱えたままでも量子力学特有の干渉を引き起こせるはずだという議論が、研究者の間で盛んに交わされるようになりました。
そこで今回の研究では、実験装置そのものは約30ミリケルビンという極低温に保ちながらも、外部から雑音を注入して見かけ上“熱い”シュレディンガーの猫を生成できるか調べることにしました。
「熱いシュレーディンガーの猫」生成プロジェクト
