この結果は、動物行動学における一般的な前提、つまりは「新しい問題を解決するのは、好奇心旺盛で大胆な個体である」という考えに一石を投じます。

内気なことは決してネガティブなことではなかったのです。

むしろ「内気さ」は「粘り強さ」や「慎重さ」と密接に関係しているのかもしれません。

研究主任のアレクサンドロス・ヴェジラキス(Alexandros Vezyrakis)氏は「イノベーションの発生は、大胆さや勇敢さよりも、どれだけ粘り強く何度も足を運ぶかということに、より強く影響されるのかもしれません」と話しています。

問題解決能力には「環境」も影響した

また一方で、今回の実験はテスト環境が問題解決能力に大きな影響を与えるという側面にも光を当てています。

実験によると、静かな実験室内では、60%のハツカネズミが少なくとも1つの問題を解くことができましたが、より社会的なやりとりがある自然環境に近いセットでは、問題解決に成功した個体がわずか21%に留まっていたのです。

野生に近い環境は、実験室のように静かなものではなく、他の仲間がいたりと常に騒がしく、また本物の野生下では天敵に狙われる危険性もあります。

こうした注意のばらつきから、自然環境では問題解決能力が下がると考えられます。

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実験に参加したハツカネズミ/ Credit: MPI – Shy mice are more persistent problem-solvers(2025)

今回の実験結果は、私たちヒトにもそのまま適用できるわけではありませんが、シャイな性格や慎重な行動が問題解決において有利に働く可能性があることは十分に示しています。

内気でシャイな人は確かに、新しいことにどんどん挑戦したり、新しい場所に積極的に行くことは少ないですが、一つのことに集中してい取り組む傾向があると考えられています。

人間社会でも、粘り強く努力し続けることが、時として成功への道を開くという点では共通点があるといえるでしょう。