世界最速クラスのスーパーコンピュータを動員しても、わずかな時間で量子の結果をそっくり再現・偽造するのは難しいと示された一方で、古典シミュレーションも進歩が早いため、将来的により強力なアルゴリズムが登場すれば、新たな議論が巻き起こるかもしれません。
さらに遠隔操作という面でも大きな前進がありました。
「本当に量子計算しているの?」という不安は、離れた場所の装置を使う際に必ずつきまとうものです。
しかし今回の研究は、大規模検証システムを組み合わせれば、量子の動きをある程度保証できる具体的な例を示しました。
最適化によって短時間・少ないリソースで安全な乱数を作れる未来もありますし、スケールアップにより「56量子ビット」以上の回路を扱えるようになれば、さらに強度の高い乱数を生み出せるでしょう。
最終的に、この論文が示唆するのは、「量子力学がもたらす完璧なランダム性を、第三者が厳しくチェックしながら社会で利用できる時代が近い」ということです。
暗号やオンライン取引など重要分野への応用が期待されるのはもちろん、“量子技術が日常に入り込む未来”をぐっと引き寄せる、非常に大きな一歩といえます。
課題はまだありますが、この先の技術進化によって、量子コンピュータが“誰にも予測できない乱数”をより手軽かつ強固に提供する日がやってくるかもしれません。
全ての画像を見る
元論文
Certified randomness using a trapped-ion quantum processor
https://doi.org/10.1038/s41586-025-08737-1
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。