現在はこのような深海魚についても、これまではほとんど利用されてこなかった魚種の利用が行われるようになりました。

深海底曳網漁業の基地がある鹿児島県南さつま市では、同市が鹿児島大学水産学部や水産仲卸売会社の株式会社田中水産(鹿児島市)と協力する「かごしま深海魚研究会」という<学・産・官>が一体となった取り組みがあり、深海魚の普及活動を行っています。

この研究会の会員企業や料理店など取り組みにより、鹿児島県の多くのお店で深海魚が出されたり、販売されたりしています。スミクイウオについても、刺身など様々な料理で美味しく食べられているようです。

我が家でも、スミクイウオは刺身にしたり塩焼きにしたりして食べています。先述のように、底曳網漁業で水揚げされたスミクイウオは鱗が剥がれ落ちていることが多く、内臓を落として塩をまぶして焼くだけで美味しく食べられるのです。

捨てられることも多かった深海魚『スミクイウオ』を食べてみた 現在は脱・未利用魚?スミクイウオの塩焼き(撮影:椎名まさと)

近年は「かごしま深海魚研究会」の他にも、静岡県沼津市戸田の「ヘンテコ深海魚便」などの取り組みもあり、従来よりも深海魚を入手することが容易になりました。

興味のある方はぜひ、様々な深海魚(一般的には食用としないものも含めて)を食べてみてほしいと思います。

(サカナトライター・椎名まさと)

参考文献

中坊徹次編(2013)、日本産魚類検索 全種の同定 第三版、東海大学出版会

岡本誠・前田達郎.2021.日向灘から得られたSynagropidae スミクイウオ科(新称)の2種,Parascombrops analis バケスミクイウオとP.ohei サラシヒメスミクイウオ(新称)の九州からの初記録.Ichthy,Natural History of Fishes of Japan,7:23~29.

岡本誠・本村浩之編(2024)、日本の深海魚図鑑、山と溪谷社

山田梅芳・時村宗春・堀川博史・中坊徹次(2007)、東シナ海・黄海の魚類誌.東海大学出版会