一方、脱出に失敗したニホンウナギ稚魚は、平均して200秒程で完全に動きが無くなったといいます。
脱出できるのはある程度成長してから?
捕食されても体を上手く駆使して脱出することができるニホンウナギ稚魚。
1月16日にMarine ecology progress seriesに掲載された論文(Changes in post- and pre-capture escape ability over development in juvenile Japanese eels)では、脱出成功率が成長段階により異なることも明らかになりました。
ニホンウナギは浮遊生活から着底生活への移行に伴い、シラスウナギ(色素発達段階によって複数の段階に区別される)→クロコ→黄ウナギへと発達し、行動や形態が大きく変化することが知られています。
この研究では、この発達に伴う変化が脱出に必要な要因の一つと考え、2021年から2023年にかけて、幅広い成長段階のシラスウナギをドンコに与え、観察を行いました。
その結果、発達が進んでいないシラスウナギは、ドンコのエラから脱出できないことが判明。一方、一定程度の発達が進んだシラスウナギやクロコ、黄ウナギでは脱出できることが分かったのです。
これによりニホンウナギ稚魚は成長に伴い、捕食魚のエラの隙間から脱出するのに必要な形態や能力を獲得していることが示唆されました。
より高い放流効果を得られる可能性
日本ではニホンウナギの資源減少を受け、資源回復策の一つである放流を行っていますが、大型個体では放流水域に適応することが難しく、小型個体では他の魚に捕食される可能性が高いようです。
今回の研究は、どのような発達段階・個体のニホンウナギを放流すれば高い放流効果を得られるのか、その手掛かりとして重要になっていくでしょう。
(サカナト編集部)