イスラエルのイランに対する報復措置の実行が懸念されている。イスラエルにとっては、ガザ、西岸、レバノン、イエメン、イラク、シリアでの軍事作戦に重ねて、イランとの軍事的対立も激化させていこうというのだから、普通では考えられない状況にある。
しかし始めてしまった軍事作戦を終了させる前に、そしてアメリカの大統領選挙あるいは新大統領の就任前に、できるだけ優位な状態を作り出してしまいたい、それによって自身の国内政治での立場の強化を図りたい、という動機づけが、ネタニヤフ首相に強く働いてしまっている。
レイムダック・バイデン大統領の残り任期は地獄の5カ月か
ハマスの最高指導者として知られるイスマーイール・ハニーヤ政治局長が、テヘラン滞在中に殺害された、というニュースが世界を駆け巡った。その半日前には、レバノンのヒズボラの最高位の軍事司令官フアド・シュクル氏が、空爆によって殺害された。「実行声明...
遂にフランスのマクロン大統領までイスラエルへの武器供給を止めるべきだと発言した。それにネタニヤフ首相が激しく反発し、「恥を知れ」、となじる演説を行った。同時に、イスラエル軍が、レバノンにあるフランス企業トタル施設を爆撃した。ネタニヤフ首相の心理状態も、かなり切迫してきているようだ。
かつてアメリカのリチャード・ニクソン大統領は、自分は非合理的で気まぐれだという印象を相手に意図的に与えて、相手方の不安をかきたてることを通じて、交渉を有利に進めようとしたとされる。
この考え方は、「狂人理論(madman theory)」と呼ばれる。ニクソン政権では、キッシンジャー補佐官/国務長官が、ある種の司令塔として機能していた。ニクソンの「狂人」性を、キッシンジャーが交渉で上手く活用する、という仕組みであった。
ニクソンに続いて「狂人理論」の観点から関心を集めてきたのが、トランプ前大統領だ。非合理的で気まぐれに行動する印象を、「取引」交渉に活用するのを、好んでいる。