その上で、演出には“ほどよいB級感”が漂っており、若干粗いCGや特殊メイクは“番組としてのリアルさ”というより“70〜80年代の映画の手触りとしてのリアルさ”が感じられる。超常現象の演出を見せるまでに“番組としてのリアルさ”は散々追求して没入させているため、超常現象以降は大ぶりな演出で揺さぶる方向にシフトチェンジしても作風がブレないというところも今作の巧みさだろう。
ホラー映画や70〜80年代映画への愛
そんな70〜80年代の映画の手触り-時代を感じさせる映像・特殊メイク表現というところに関しては、監督が出演者に映画『キャリー』(76年)を見せたことも判明している。
今作からは『キャリー』に代表されるブライアン・デ・パルマ監督作品(『ファントム・オブ・パラダイス』『殺しのドレス』など)や、名作ホラー『エクソシスト』(73年)のエッセンスや、さらに深夜トーク番組の世界観にはマーティン・スコセッシ監督の『キング・オブ・コメディ』(83年)といった影響も感じられ、当時の映画への愛とリスペクトが込もった世界観には観ていてノスタルジックな気分にさせられた。
デヴィッド・ダストマルチャンの存在感
そんな今作の世界観を“番組ホスト”として作り上げた中心が、主演のデヴィッド・ダストマルチャンだ。彼は『ダークナイト』(08年)でジョーカーに利用された精神病患者役で印象的な長編映画デビューを飾って以降、『アントマン』シリーズや『DUNE/デューン 砂の惑星』、『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』や『ブギーマン』など数々の話題作でその特徴的なビジュアルを活かした役柄をこなしてきた。
彼の存在感は今作でもふんだんに発揮されている。“深夜のトーク番組の人気者”という“陰の主役”であり、視聴率と暗い過去に取り憑かれ混乱している狂気的な側面も持つキャラクターに、彼の風貌と演技はピタリとハマった印象だ。ダストマルチャンはNetflix版「ONE PIECE」シーズン2においてMr.3役での出演も決まっており、さらなる飛躍が期待される注目株。今作も彼の魅力を存分に味わえる1作として記憶に刻まれた。