国民全員が強制加入の医療保険制度を今日まで作らず、家族(児童手当、児童扶養手当など)なども少ない個人主義国家としてもアメリカの姿が浮き上がってくる注9)。
そして近未来の日本の姿を考える際に不可欠なデータとしては、「部門別社会保障給付費」の年次推移(図2)があげられる。いずれも日本の「福祉国家」を揺るがす総額と伸びになっている。
「年金」の比重が下がる
ただし時系列の趨勢でいえば、「年金」は2000年度であれば全体の53.1%を占めていたが、2018年度になると45.5%に下がり、2022年度では40.5%まで低下した。
その反面で2000年の「医療」は31.4%、「福祉その他」は15.5%であったが、2018年度では「医療」は32.7%、「福祉その他」は21.8%に増え、2022年度になると、図2のようにますます増加してきた。
「社会保障給付費」の財源
ちなみに「社会保障給付費」の財源は過去3か年度では表6の通りである。
表6 社会保障給付費の財源
2018年度 | 2020年度 | 2022年度 | |
社会保険料 | 54.8 | 39.8 | 50.5 |
被保険者拠出 | 28.9 | 21.0 | 26.6 |
事業主拠出 | 25.9 | 18.9 | 23.9 |
公費負担 | 38.0 | 31.9 | 42.0 |
国庫負担 | 25.3 | 22.1 | 29.6 |
他の公費負担 | 12.7 | 9.7 | 12.4 |
資産収入 | 3.3 | 23.8 | 3.8 |
その他 | 3.9 | 4.5 | 3.7 |
合計(%) | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
出典:国立社会保障・人口問題研究所編,2024:7.
単純化すると、国民が「被保険者拠出」として毎月支払っている「社会保険料」は全体の25%程度であり、雇用者としての事業主負担が同じく25%あまりであり、両者の合計が「社会保障給付費」財源の半分程度を占めている。要するに、被保険者としての個人の負担額は総額の1/4くらいなのである。