ちなみに直接的に見分けられるポイントではないが、イモガイが肉食性であるのに対し、マガキガイは草食性である。
マガキガイの知恵
種族が全く違うこれらの貝は、どうしてこんなにも似ているのだろうか。
その答えを示唆する説がある。生き物の世界では、毒のある種の生き物のふりをして外敵から身を守る生き物がいる。この身の守り方はベイツ擬態とよばれ、昆虫でも毒のあるスズメバチに姿を似せている全く無害なものがいたりする。
マガキガイはイモガイに似ている(提供:PhotoAC)
あくまで一説ではあるが、マガキガイは毒のあるイモガイに姿を似せることによって、自分の身を守っているのかもしれない。
親しまれるマガキガイ
危険性ゆえ人から忌避されやすいイモガイとは異なり、南国ではマガキガイは非常に親しまれている貝の一つである。というのも、マガキガイは食用であり、しかも美味なのである。
また、アクアリウムの世界では草食性のマガキガイは水槽に付着したコケを食べてくれる生き物として重宝されている。水族館でも、マガキガイをコケ取りのために飼育しているところは非常に多い。
このように、マガキガイはとても魅力的な生き物である。海辺でイモガイのような生き物を見かけたら、落ち着いて注意深く観察してみるのもいいかもしれない。
<宇佐見ふみしげ/サカナトライター>