ヌタウナギは漢字で書くと「沼田鰻」となりますが、沼でも田んぼでもなくやや深い海に生息しています。タウナギとも名前が似ていますが、ウナギやタウナギとは目のさらに一つ上の段階である「綱(こう)」の段階から異なっています。

名前は「ウナギ」だけど実はウナギではない『タウナギ』と『ヌタウナギ』ヌタウナギの頭部(提供:PhotoAC)

ウナギやタウナギが他の大半の硬骨魚類と同じ「条鰭綱」に属するのに対し、ヌタウナギ類は「ヌタウナギ綱」に属します。実はヌタウナギは魚類の中でも極めて原生的な存在とされており、ウナギどころか他のあらゆる魚たちとも全く違う構造をしているのです。

ヌタウナギの最大の特徴は「顎がない」こと。口はすぼまった穴の形状をしており、摂餌の際は中から舌がぬるっと飛び出して対象を削り取ります。また軟骨のみしか持たず、背骨のところには細長い棒状のものが1本収められているだけで小骨のたぐいは全くありません。

ヌタウナギはシルエットだけはウナギ状に見えますが、実態は全く異なる生き物なのです。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>