改善された湘南の攻撃配置
退場者を出した磐田を完膚なきまでに打ちのめした湘南。PKによるルキアンの先制ゴールを含め、この日の5得点はグラッサ退場後に生まれたものだが、11人同士の戦いだった前半開始からの15分間に関しても良い攻撃を繰り出せていた。
今季序盤と比べ改善が見られたのは、ビルドアップ(GKや最終ラインからのパス回し)の際の3センターバックの立ち位置だ。鈴木淳之介、キム、髙橋による3バックは概ねペナルティエリアの横幅に収まる立ち位置をとり、中央とサイドどちらにもパスを出せる状態を維持。これによりパスコースを限定しきれなかった磐田陣営の守備の出足は遅れていた。
最終スコア1-2で敗れた第17節ガンバ大阪戦では、3センターバックの左右を務めたDF大野和成と鈴木雄斗がタッチライン際へ開きすぎてしまい、パスコースが減る場面がちらほら。湘南が自陣でボールを回収され、G大阪のFW宇佐美貴史に先制ゴールを奪われた前半29分のシーンがこの典型例だ。
湘南GKソン・ボムグンがペナルティエリアでボールを保持したこの場面では、右センターバックの鈴木雄斗が自陣後方タッチライン際に立ったため、G大阪のFWウェルトン(左サイドハーフ)に捕捉されている。ここに立つ鈴木雄斗へパスが繋がったとしても、すぐさまウェルトンのプレスに晒されるため、その後パスが繋がる可能性は低かっただろう。
これに加え、この場面では同じくセンターバックの鈴木淳之介と大野の距離も開きすぎていたため、ボールを失った直後の守備がしにくい状態に。ソンの縦パスをG大阪MF鈴木徳真にカットされたうえ、同クラブFW山下諒也にラストパスを繰り出されると、これを受けた宇佐美への鈴木淳之介の寄せが案の定間に合わなかった。
3センターバックの攻撃配置の悪さが湘南の長きにわたる課題だったが、7月以降これが改善傾向に。今回の磐田戦でも、3センターバックが概ねペナルティエリアの横幅から出ない立ち位置をとり、外側と内側(左右)どちらにもパスを出せる状況を作れていた。
ウイングバックにボールが渡り、相手を自陣に釘付けにした際は、左右のセンターバックがウイングバックをすかさずサポート。ウイングバックの近く、且つ斜め後方に左右のセンターバックが移動することで、パスコースに困った際のボールの逃がしどころとして機能した。
この日3バックの左右を務めた髙橋と鈴木淳之介が前述の立ち位置をとり続けたことで、湘南は波状攻撃が可能に。この日の湘南の大勝は、彼らによってもたらされた。