「親友を失った悲しみ」と同等の経験をしていた

調査の結果、全体の傾向として、参加者はシリーズの終了に対し、深い悲しみや喪失感を経験しており、ネイバーズの終了を受け入れるのが困難であると報告していました。

その中でも特に興味深かったのは、参加者がネイバーズに登場するキャラクターとの間で、高いレベルでの「パラソーシャル関係」を築いていたことです。

パラソーシャル関係とは、個人的には面識のない有名人やインフルエンサー、あるいはドラマ・ゲーム・アニメなどに出てくる架空の人物に対して、親しみや友情、恋心を一方的に抱く関係のことです。

これは異常心理ではなく、ほとんどの人が経験している健全な心の働きであり、多くの場合は精神の安定や気分の向上といったプラスの作用を与えてくれます。

本調査では、全部で72人のキャラクターがお気に入りの人物として選ばれており、現役のキャラクターや過去回でシリーズを去ったキャラクター、中には1980年代にまで遡る古いキャラクターもいました。

参加者はそうした自分の好きなキャラクターに会えなくなることに対し、強い悲嘆や喪失感を感じていたのです。

これについて心理学者で研究主任のアダム・ジェレス(Adam Gerace)氏は「視聴者が現実の親しい友人と別れたり、恋愛関係が終わったときに感じる悲嘆や苦痛と同じレベルの感情経験をしていることを意味する」と指摘しました。

また「ファンたちはまるで親友を失ったかのようにシリーズの終わりについて話していたのです」と述べています。

親友を失ったような悲しみを経験していた
親友を失ったような悲しみを経験していた / Credit: canva

これと同じ反応は、いいともが終了したときに多くの視聴者が直面した感情反応とよく似ているのではないでしょうか。

長年いいともを見続けてきた視聴者の中には、タモリさんが親戚のおじさんみたいに感じられたり、タモリさんの顔を見るとなぜか安心できたという人も多いかもしれません。

以上の結果は、パラソーシャル関係が年月の積み重ねによって強まることで、長寿番組が終了したときの喪失感や番組内の人物と会えなくなることの寂しさががより深まることを示すものです。

その一方で、ネイバーズの視聴者の多くは「シリーズがこれほど長く続いたことに感謝している」とも答えていました。

「こうした反応は何もテレビ番組に限ったことではないでしょう」とジェレス氏は話します。

特に今ではテレビよりも、YouTubeやサブスクのドラマシリーズが高い人気を集めています。

例えば、贔屓(ひいき)にしていたYouTubeチャンネルの終了や、メンバーの卒業に対して、同様の喪失感を感じている方も多いのではないでしょうか。

孤独な人ほど「現実の友人」と「架空のキャラ」に対する脳活動パターンが同じになる!

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参考文献

Fans of long-running TV show experienced grief similar to losing a close friend when show ended, study finds
https://phys.org/news/2024-06-fans-tv-experienced-grief-similar.html

Feel grief when a favorite TV show ends? You’re not alone
https://www.nbcnews.com/health/health-news/feel-grief-favorite-tv-show-ends-re-not-alone-rcna156456

元論文

When TV neighbours become good friends: Understanding Neighbours fans’ feelings of grief and loss at the end of the series
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0302160

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部