実は本家MBTI®も科学的根拠が乏しい

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MBTI®は、米国の作家ブリックスとマイヤーズ、ユング派の心理学により長年に渡って性格検査の改良が進められ、検査としての精度に関して検証が繰り返されてきました。

そのため米国では一定の支持を得ている性格検査ではありますが、その一方でこの診断については疑問を投げかけられているのも事実です。

ではこの診断のどこに問題があるのでしょうか? ひとつずつ見ていきましょう。

性格を検査で捉えきれていない可能性がある

まず他の性格検査との相関が小さく、妥当性が低い点です。

心理検査における妥当性とは、その検査が測定を試みているもの(ここでは性格)を的確に測定できているかを意味します。

妥当性が担保されているかは、もう既に確立されている検査との相関を見ることなどで評価されます。

ノルウェー経営大学のエイドリアン・ファーナム(Adrian Furnham)氏が行なった研究では、MBTI®が心理学研究でよく使用される性格検査NEO-PI-Rとの相関が小さく、妥当性に欠けることを報告しています。

つまり、MBTI®は性格を検査で捉えきれていないという指摘があるのです。

期間を空けて再度診断を受けると結果が変わってしまう

次に性格検査としての信頼性が低い点です。

心理検査における信頼性とは、期間を空けて検査しても前回の検査結果と同じになる、という結果の安定性を指します。

米国オクラハマ大学のケン・ランドール(Ken Randall)氏らが行なったメタ分析の研究では、興味・関心の方向、物事の見方、外界との接し方の3指標に関しての信頼性は十分だったものの、判断の仕方に関しては信頼性が低いとの結果を報告しています。

MBTI®の診断結果が昨日と今日で違うとなると、会社でのポジションや学業成績の予測に利用したとしても、検査時と現在では診断されたタイプが変わってしまっている可能性があります。

当然そうなると、公の場で使うのが難しくなってきます。

MBTI診断を受けて毎回結果が変わってしまう人は、この検査がもともと内包する問題によって、結果が変わっている可能性があります。

おそらく、時間を開けて診断したら結果が変わってしまったという人は、判断の仕方に関するタイプ分けの思考型(T)と感情型(F)が入れ替わっていたのではないでしょうか?

客観的なデータに基づいていないユングの理論がベースになっている

3つ目は「夢分析」などで有名なカール・ユング(Carl Jung)の理論がベースになっている点です。

キャサリン・ブリックス氏とその娘であるイザベル・マーヤーズ氏は、ユングが提唱した性格のタイプ分けを試みた理論に、判断型か、知覚型かという「外界との接し方」の4つ目の指標を加え、MBTI®を作成しました。

しかしユングによる性格の分類は、ユング自身の観察や経験に基づいて作られており、客観的なデータに基づいたものではないとされています。

そのため、性格検査として利用することには問題が指摘されているのです。

二項対立型の指標で、その中間層を考慮していない

最後に、この診断では思考か直観かのような二項対立型の指標を用いて、タイプを決めているため、その中間となる部分が考慮されていないという問題があります。

二項対立型の指標に基づく診断は、外向的でも内向的でもない人や、考え込むわけでもなく感情的でもない人などを、どちらか一方のタイプに無理やり当てはめる必要性が出てきてしまいます。

現在の心理学では、性格とは特定のタイプに当てはめるものではなく、連続的なグラデーションによって表現されるべきだという意見が優勢です。

そのため、現在はタイプに分類する類型論に基づく性格検査ではなく、誠実性や協調性などのいくつか性格特性を設け、それぞれの程度で性格を評価する特性論に基づく性格検査が主流になっています。

MBTIは仲間内での話のネタとして楽しむのが一番良いかもしれない
MBTIは仲間内での話のネタとして楽しむのが一番良いかもしれない / Credit: Canva

このようにMBTI®は、性格検査としての信頼性や妥当性をはじめ、ベースになった理論、性格を分類する仕組みに問題が指摘されています。

その点を考慮すると、MBTI®を元ネタにした考えられるMBTIの診断結果も、あまりあてにならないと考えた方がいいでしょう。

血液型診断や星座占いなどと同じくひとつのエンタメとして楽しむのがいいのかもしれません。

「言われなくても、そんな楽しみ方しかしてないよ」という人の方が多いかもしれませんが、本来のこの検査の目的や経緯を知ることは、安心してサービスを楽しむために大切なことでしょう。

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参考文献

Why using Myers-Briggs at work Might Be a Terrible Idea (MBTI)
https://www.psypost.org/using-myers-briggs-work-might-terrible-idea-mbti/

Myers-Briggs
https://www.psychologytoday.com/us/basics/myers-briggs

元論文

Evaluating the validity of Myers-Briggs Type Indicator theory: A teaching tool and window into intuitive psychology
https://doi.org/10.1111/spc3.12434

The Big Five Facets and the MBTI: The Relationship between the 30 NEO-PI(R) Facets and the Four Myers-Briggs Type Indicator (MBTI) Scores
https://doi.org/10.4236/psych.2022.1310095

Validity and Reliability of the Myers-Briggs Personality Type Indicator: A Systematic Review and Meta-analysis
https://www.scirp.org/reference/referencespapers?referenceid=3245993

ライター

AK: 大阪府生まれ。大学院では実験心理学を専攻し、錯視の研究をしていました。海外の心理学・脳科学の論文を読むのが好きで、本サイトでは心理学の記事を投稿していきます。

編集者

ナゾロジー 編集部