保険を選ぶ際、保障内容以外で気になるのが保険金を支払う保険会社の体力だ。ここでは、支払い能力や安全性、健全性を判断する指標である「信用格付」「売上高」「総資産」「ソルベンシー・マージン比率」の4項目について、ランキング形式で保険会社を紹介する。「かんぽ生命」の問題もあり、保険会社を見直そうとしている人は、ぜひ参考にしてほしい。

「信用格付」ランキング――保険会社の債務履行能力や確実性を示す

信用格付とは、保険会社が負う債務を約定どおりに履行する能力を、格付会社が総合的に判断した指標のこと。本来は保険会社が債券の元本や利息の支払いが適切に行われるかどうかを、債券投資を行う投資家向けに公表するものだが、保険会社の信用力の高さを客観的に測る指標にもなっている。

「信用格付」ランキングTOP10(2019年12月13日現在)

順位 保険会社名 S&P Moody's Fitch R&I
(格付投資
情報センター)
JCR
(日本格付
研究所)
A.M.Best
1 東京海上
日動
火災保険
A+ Aa3 AA- AA+ AAA A++
保険財務力格付 保険財務格付 保険財務 発行体格付 長期発行体格付 財務格付
2 損害保険
ジャパン
日本興亜
A+ A1 A+ AA AA+ A+
保険財務力格付 保険財務格付 保険財務 発行体格付 保険金支払能力格付 財務格付
3 日本生命保険 A+ A1 A+ AA AA -
保険財務力格付 保険財務格付 保険財務 保険金支払能力 保険金支払能力格付
4 第一生命
保険
A+ - A+ AA- AA- A+
保険財務力格付 保険財務 保険金支払能力格付 保険金支払能力格付 財務格付
5 あいおい
ニッセイ
同和損害保険
A+ A1 - AA AA+ A+
保険財務力格付 保険財務格付 発行体格付 保険支払能力格付/
長期発行体格付
財務力格付
6 住友生命
保険
A+ A1 A+ AA- AA- -
7 明治安田
生命
保険
A A1 A+ AA- AA- -
保険財務力格付 保険財務格付 保険財務 保険金支払能力格付 保険金支払能力格付
8 富国生命
保険
A A2 A AA- AA-p -
保険財務力格付 保険財務格付 保険財務格付 保険金支払能力格付
9 三井住友
火災海上
保険
A+ A1 A+ AA - -
保険財務力格付
発行体格付
保険財務格付
長期発行体格付
保険財務 発行体格付
保険金支払能力
10 アフラック
生命保険
A+ Aa3 WD AA- AA -
保険財務力格付 保険財務格付

※上記ランキングは、信用格付がより多くなされている、または格付の評価がより高い保険会社が上位になるよう、筆者独自にランキングを作成した。
※各保険会社のホームページと、格付会社の格付一覧で確認できる信用格付を一覧表示した。

第1位,東京海上日動火災保険 日本初の海上保険会社

前身となる「東京海上保険会社」の創業は1879年。当時業績を伸ばしていた海運業や貿易業のための、日本初の海上保険会社として開業した。創業時の株主には、岩崎弥太郎や渋沢栄一などの一流財界人が名を連ねている。

終戦後に落ち込んだ海上保険市場に代えて火災保険や、1950年代以降に伸展した海外取引に係る企業保険、高度成長期のモータリゼーションに即した自動車保険の販売など、時代のニーズに合った保険をいち早く提供してきた。

1990年代以降は、大規模自然災害が頻発する状況を受けて、巨額な保険金支払いも対応できる体制づくりに努めている。

第2位,損害保険ジャパン日本興亜 SOMPOホールディングスの中核企業

SOMPOホールディングスグループの中核的な保険会社であり、主に国内損害保険事業を担う。国内の損害保険会社の中ではトップクラスの規模。

1887年に日本初の民営火災保険会社「東京火災」として創業。現在は自動車保険を中心に、火災保険、地震保険、海外旅行保険などの保険商品を取り扱っている。

ゴッホの「ひまわり」やゴーギャンの作品を常設する美術館や人形劇場の運営、大規模災害時の被災地支援活動など、社会貢献にも積極的なのが特徴だ。

第3位,日本生命保険 国内生命保険の最大手

日本で3番目の生命保険会社となる日本生命保険会社が設立されたのは、1889年。設立当初は相互扶助の仕組みを取り入れていた。創業当時からの厳格な診査と地道な保険募集をベースにした堅実経営によって、創業10年目には保有契約高が業界首位となり、現在の国内生命保険会社最大手の礎となった。

現在も、株主配当の必要がなく、利益剰余金の大半を契約者に還元できる相互会社の形態を維持している。堅実で健全な経営をモットーとし、地域の発展や芸術・文化の発展に貢献する事業を数多く手掛けている。

保険料等収入をもとにした資産運用関連事業においても、常に収益性の向上に努めている。公益性の高い事業や産業発展に寄与する投融資、国内外での資産運用などを積極的に行っている。

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「売上高」ランキング――保険会社が本業から得る収益を表す

保険会社が本業の保険事業から得る収益は、生命保険会社では「保険料等収入」、損害保険会社では「正味収入保険料」という勘定科目で計上される。これが、一般企業の「売上高」にあたる。

本項では、各保険会社が手掛ける保険事業の売上規模を測る「保険料等収入」またはあるいは「正味収入保険料」のランキングを見てみよう。

「売上高」ランキングTOP10(2018年4月1日~2019年3月31日)

順位 保険会社名 売上高
(億円)
勘定科目
1 日本生命保険 47,751 保険料等収入
2 かんぽ生命保険 42,364 保険料等収入
3 明治安田生命保険 27,708 保険料等収入
4 住友生命保険 24,053 保険料等収入
5 第一生命保険 23,149 保険料等収入
6 東京海上日動火災保険 21,666 正味収入保険料
7 損害保険ジャパン日本興亜 21,486 正味収入保険料
8 三井住友火災海上保険 15,124 正味収入保険料
9 アフラック生命保険 14,310 保険料等収入
10 あいおいニッセイ同和損害保険 12,335 正味収入保険料

※正味収入保険料とは、損害保険会社に支払われた保険料のうち、保険契約者に払い戻される解約返戻金や、元受あるいは受再契約の収入保険料から出再契約の再保険料を控除したもの。

第1位,日本生命保険 保有契約高が生命保険会社でトップ

信用格付ランキングに続き、売上高ランキングでも日本生命保険が上位にランクインしている。

堅実経営を重視する社風と、営業職員を日本生命の原動力として位置付けてきた理念、そして「お客様のために」という精神の徹底が奏功して、長きにわたって生保業界NO.1の保有契約高や保険料等収入を誇っている。

第2位,かんぽ生命保険 全国各地の郵便局ネットワークが強み

2006年に郵便局から「株式会社かんぽ」として生命保険事業が分離・独立し、翌年に商号を変更した株式会社かんぽ生命保険。

売上高ランキング第2位の実績は、全国各地に広がる郵便局ネットワークを活かして、地域住民に密着した相談しやすい環境が整えられていることが主な要因と考えられる。

超低金利環境下における「販売・資産運用両面での収益向上」と「保有契約年換算保険料の反転・成長」を目指して、保障重視の販売強化と募集品質の向上を目指し、第三分野などの新商品開発を積極的に行っている。一方で2019年に不正販売問題が発覚。今後の対応・動き次第ではあるが、保険料等収入が揺らぐ可能性は十分ある。

第3位,明治安田生命保険 日本初の生命保険会社を前身に持つ

前身である「明治生命保険」は、日本初の生命保険会社として1881年に開業。現在も、保険業法が定める相互会社の形態を維持している。

「明治安田生命保険」は、2004年に三菱グループの「明治生命保険」と芙蓉グループの「安田生命保険」が合併して誕生した。2つの企業グループと官公庁を法人営業基盤として持ち、団体保険に強みがある。

「お客さまに寄り添い、アフターフォローで感動を追求する」が企業ビジョンの一つに掲げられており、「みんなの健活プロジェクト」を大規模で展開している。

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「総資産」ランキング――保険会社の規模を示す

「総資産」には流動資産や固定資産、繰延資産を含むすべての資産が含まれるため、保険会社の規模を大まかに把握するための代表的な指標として用いられる。

「総資産」ランキングTOP10(2019年3月期末現在)

順位 保険会社名 総資産(億円)
1 かんぽ生命保険 739,045
2 日本生命保険 680,847
3 明治安田生命保険 392,608
4 第一生命保険 359,471
5 アフラック生命保険 121,339
6 東京海上日動火災保険 93,930
7 損害保険ジャパン日本興亜 75,158
8 大樹生命 75,046
9 東京海上日動あんしん生命保険 73,859
10 三井住友海上火災保険 69,771

第1位,かんぽ生命保険/第2位,日本生命保険

保険会社単体を対象とした本ランキングでは、「かんぽ生命保険」と「日本生命保険」が第3位の「明治安田生命」を大きく引き離している。会社の規模では、2019年3月末時点では「かんぽ生命保険」が「日本生命」を若干上回り、保険業界トップだ。この状況は、「かんぽ生命保険」の民営化以来続いている。

近年はかんぽ生命の人気商品だった養老保険などの満期や、新規保険の伸び悩みで総資産を減らしている一方で、日本生命は三井生命(現 大樹生命)の買収や新規保険の販売増で総資産を増やしており、連結ベースでは両社の総資産額は拮抗している。かんぽ生命には不正販売問題もあり、この順位も変動する可能性が高い。

日本生命保険は、信用格付、売上高(保険料等収入)だけでなく総資産でもトップクラス。信用度、売上規模、会社規模を総合的に見ると、実質的には業界トップと言えるだろう。

第3位,明治安田生命

明治安田生命は、売上規模と総資産ともに第3位。損益面と財務面の双方から見て、安心して保険金を預けられる保険会社と言えるだろう。

ソルベンシー・マージン比率――保険会社の健全性、支払余力を示す

一般的に、保険会社は保険契約者から受け取った保険料を、経費などを差し引いた上で責任準備金としてプールし、それを保険金の支払いや解約返戻金などの原資としている。

大規模災害などで保険金の支払総額が責任準備金を上回るような事態が発生した場合でも、確実に契約者に保険金を支払える能力である「支払余力」を指標化したものが「ソルベンシー・マージン比率」だ。

ソルベンシー・マージン比率が200%を下回ると、予測不能な大規模自然災害などの場合に保険金の支払いができなくなるリスクが高いと見なされ、金融庁の指導が入る仕組みになっている。ソルベンシー・マージン比率は、数値が高いほど保険会社の安全性や健全性が高いと判断できる。

「ソルベンシー・マージン比率」ランキングTOP10(2019年3月期末)

順位 保険会社名 ソルベンシー・マージン比率
1 東京海上日動あんしん生命保険 2,063.6%
2 全労済 ※ 1,810.1%
3 三井住友海上あいおい生命保険 1,681.8%
4 大同生命保険 1,271.9%
5 富国生命保険 1,189.7%
6 かんぽ生命保険 1,188.0%
7 大樹生命 1,132.2%
8 明治安田生命保険 983.3%
9 第一生命保険 970.8%
10 アフラック生命保険 961.2%

※全労済の決算期は5月なので、算出基準日は2019年5月期末となっている

第1位,東京海上日動あんしん生命保険 唯一2,000%を超える

東京海上グループの国内生命保険事業の中核となる生命保険会社。1996年に前身となる東京海上あんしん生命保険が設立され、2001年の東京海上と日動火災の共同持株会社化後の2003年に現在の社名で再スタートした。

設立後、同グループの東京海上日動火災保険の販売チャネルを活かした営業戦略で、急速に保険契約件数を伸ばした。現在は、医療保険やがん保険、家計保障保険など、第三分野の保険販売にも積極的であり、販売件数も堅調に伸びている。

第2位,全労済 余剰分が割戻金として分配される

1957年に設立された「全労済」は、農業・漁業・林業・消費・商工の5分野で共済事業(組合員相互に助け合う活動)を行う協同組合だ。

「全労済」は非営利団体であり、組合員が支払う掛け金はリーズナブルだが、一般的な保険同様の保障を受けられるだけでなく、共済金の余剰分は割戻金として組合員に分配される。ただし保障額が若干少なく、保障内容も不十分になりやすい傾向がある。

2018年度は資産運用リスクが増加したが、諸準備金の積立額が大幅に増加したため支払余力総額が493億円増えた。その結果、ソルベンシー・マージン比率も42.1%増加した。

第3位,三井住友海上あいおい生命保険 生命保険会社4社が合併した企業

1996年に設立された生命保険会社4社が、2001年と2011年の合併を経て誕生したのが現在の三井住友海上あいおい生命保険だ。三井住友系の国内保険会社で構成される、MS&ADインシュアランスグループに属している。

新規保険商品が好評。さらにグループの販売ネットワークや顧客基盤と独自のマーケットチャネルを融合する戦略によって、2018年度は保険商品の販売件数を順調に伸ばした。それによって、ソルベンシー・マージン比率を1,681.8%という高い水準に引き上げた。

保険会社自体の安全性や健全性を見る意義 保険金支払能力の高さは重要

保険会社の使命は、保険契約者が不測の事態に見舞われたときに、保険金を確実に支払うことである。そのためには、保険会社が支払う保険金の原資となる売上が十分にあり、責任準備金や各種積立金を含めた広義の自己資本が十分に確保されている必要がある。

保険商品選びでは保障内容や保険料が重要なポイントだが、今後はそれに加えて、保険会社の安全性や健全性も確認するようにしたい。

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文・近藤真理(フリーライター)
 

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