事業主負担は19世紀にビスマルクが「社会政策」として企業年金を公的に補助したのが始まりだ。これは今では労働者を企業にロックインし、多様な働き方を阻害するだけで、労働者の負担軽減になっていない。
事業主負担を廃止すれば「総支給額」は15%増える
ところが厚労省は事業主負担を被保険者の負担に含めていないので、「ねんきん定期便」で表示される収益率は実際の2倍である。これはほとんど労働者が負担している保険料を半額に見せているからだ。
このような不当表示をやめ、企業が社会保険料(事業主負担込み)・税込みの給与全額を払い、従業員が確定申告してはどうだろうか。総額は現行と同じだが、そこから従業員が社会保険事務所に30%払うのだ。これは現行法でも、企業が従業員にそういうオプションを与えればできる。
これによって図1の給与明細で「総支給額」を一挙に15%増やすことができる。ここから社会保険料と所得税・住民税を引くと手取りは同じだが、給与明細には45%以上の源泉徴収額が表示されるので、サラリーマンの納税者意識も高まるだろう。いま厚労省の検討している非正社員の厚生年金加入は、この逆に彼らの手取りを減らす結果に終わる。
ただこれだけでは「社会保障税」の重さが可視化されるだけで、手取りは増えない。次のステップは社会保険料と税を一元化し、現役世代の負担を減らして累進課税にすることだが、これについては別途考えよう。
【追記】「事業主負担を総支給額に含めると所得税の課税対象額が上がる」というコメントがあったが、課税対象額には含めない。社会保険料30%を会社がまとめてはらう代わりに従業員がまとめて払うだけである。