スマートフォンの普及やSNSの発達は、社会構造やビジネスに大きな影響をもたらしています。
近年では、従来プロモーションの場になっていたSNSにECの機能が装備された「ソーシャルコマース」という新たなビジネスモデルが誕生し、世界的な広がりをみせています。
また、ソーシャルコマースは中国に代表される海外でも人気を集めていることから、コロナ禍におけるインバウンド対策として、越境EC参入の足ががりとなる可能性もあります。
この記事では、ソーシャルコマースの市場規模や種類、代表的なソーシャルコマースプラットフォームについて紹介します。
目次
ソーシャルコマースとは:SNSで直接商品を購入
ソーシャルコマースの仕組みは、よく「SNS×EC」で表現されます。
ここでは、ソーシャルコマースはどのような点が従来のEC事業とは異なり、どのような強みを持っているかについて紹介します。
ソーシャルコマースとは?
ソーシャルコマースとは、ソーシャルメディア(SNS)とEコマース(EC)をかけあわせた販売チャネルの1つです。
従来SNSは、ECサイトのマーケティングプラットフォームとして広く活用されており、広告の出稿や情報発信を行う場でした。
一方ソーシャルコマースは、SNSのマーケティング機能に加え、商品を購入できるカート機能を追加したものです。
つまり、これまで情報発信の手段とされていたSNSが、実際にオンラインショッピングができるプラットフォームに変化したものがソーシャルコマースといえます。
ソーシャルコマースの強み
ソーシャルコマースは従来のECサイトと異なり、商品の検索から口コミの確認、購入までを1つのプラットフォームで完結できます。
このように決済まで手順が簡潔になることで、消費者の利便性が向上し、実際の購入につながりやすくなります。
また、ソーシャルコマースではSNSを活用するため、従来の一方的なプロモーションよりも、企業と消費者の間でのコミュニケーションが生まれやすくなります。
そこで、ブランドの世界観を伝えたり、消費者に寄り添うサービスを行うことで企業のブランディングやイメージ向上にもつながると考えられます。
世界におけるソーシャルコマースの市場規模
ソーシャルコマースは日本では新たなビジネスモデルとして注目を集めていますが、世界的にみてもその市場規模は拡大している傾向にあり、コロナ禍を機にその成長がさらに加速しています。
Research and Marketsが2020年9月に発表した「Social Commerce - Global Market Trajectory & Analytics」によると、アメリカのソーシャルコマース市場は2020年に269億米ドル(約2兆803億円)に達すると推定されています。
また、中国は2020年から2027年の期間で年平均成長率は30.5%、カナダは27%、日本は28.1%の成長が見込まれています。
このような急激な成長を受け、2020年に894億ドル(約9兆3,469億円)と推定される世界のソーシャルコマース市場は、2027年までに6,045億ドル(約62兆8,000億円)に達し、5年間での年平均成長率は31.4%と予測されています。
代表的なソーシャルコマースの種類
ソーシャルコマースは、その仕組みによっていくつかのタイプに分類されます。
ここでは代表的な7つのソーシャルコマースのタイプについて解説します。
1. C2Cタイプ
C2Cとは「Consumer to Consumer」の略です。
C2Cタイプのソーシャルコマースでは、消費者同士が個人でコミュニケーションをとり、商品の取引を行います。
eBayやAmazonマーケットプレイス、メルカリなどがこのC2Cタイプにあたります。
2. SNSタイプ
SNSタイプとは、FacebookやTwitter、Instagramなど既存のSNSを通じてユーザーがダイレクトに商品の購入をできるタイプのソーシャルコマースです。
例としては、Facebook の商品購入機能や、Instagramのショッピング機能などがあげられます。
3. 共同購入(グループ)タイプ
共同購入(グループ)タイプとは、企業が人数などの条件を設定し、それに対して複数のユーザーが同じ商品を一緒に購入申し込みをすると、割引価格が適用されるというシステムのソーシャルコマースです。
GrouponやPinduoduo(拼多多)などのサービスがこのタイプにあてはまります。
4. レコメンドタイプ
レコメンドタイプとは、Amazonなどでみられる他のユーザーの購入傾向や商品のレビュー、おすすめ機能などを基に商品の取引を行うソーシャルコマースです。
SNSにおけるシェアなどもレコメンドの1つに含まれ、このような第3者からの評価をもとに商品の価値をアピールします。
AmazonやYelpなどがこれにあたります。
5. ユーザーキュレーションタイプ
ユーザーキュレーションタイプとは、ユーザーがECサイト内で商品やサービスのリストを作成、シェアし、それを基に商品の取引を行うものです。
他のユーザーのおすすめに基づく「レコメンドタイプ」のなかでも、「誰が」おすすめするのかということを重視したタイプです。
6. ユーザー参加タイプ
ユーザー参加タイプとは、消費者が商品への出資やデザイン制作へのリクエストを通して商品の制作にかかわるタイプのソーシャルコマースです。
クラウドファンディングの考え方に近く、CAMPFIREなどのサービスがこのタイプにあたります。
7. O2Oタイプ
O2O とは「Online to Offline」の略です。
O2Oタイプとは、オンラインで商品に対する質問や意見交換ができる場を設け、実店舗などオフラインでの購入を促すタイプのソーシャルコマースです。
代表的なソーシャルコマースのプラットフォーム3選
2020年は新型コロナウイルスの影響が世界中に広がり、ロックダウンや外出自粛に伴う巣ごもり消費需要が拡大をみせました。
そのためソーシャルコマースに参入することで新たなビジネスチャンスが狙える時代が到来しています。
ここでは、3つの代表的なソーシャルコマースプラットフォームを紹介します。
1. Pinduoduo(拼多多)
「Pinduoduo(拼多多)」は、2015年に上海で立ち上げられたプラットフォームで、京東、淘宝などと並ぶ中国の代表的なECサービスの一つです。
Pinduoduoは共同購入タイプのソーシャルコマースサービスにあたり、WeChatやQQといった中国のSNSを活用して商品の取引を行っています。
Pinduoduoにおける流通取引総額(GMV)は、2020年9月末までの1年間で前年同期比73%増の1兆4,600億ドル(約153兆3,700億円)に拡大しています。
また、2020年7~9月期におけるPinduoduoの月間アクティブユーザー数は6億4,300万人と前年比成長率50%を達成しています。
PInduoduoの特徴として、主なターゲット層を発展途上の地方都市の中間~低所得者としていることがあげられます。
共同購入タイプのソーシャルコマースでは、購入希望者が増えればそれだけ割引率も上がることも多いため、できるだけ安く物を買いたい人たちに人気を集めています。
また、出品されている商品も比較的安価な日用品が多いことも特徴です。
2. RED(小紅書)
現在、中国を代表するソーシャルコマースの一つとなっているのが「RED(小紅書)」です。
REDは「Instagram+Amazon」と呼ばれるように、コンテンツ型ソーシャルコマースとして知られています。
REDはWeiboやWeChatなどと共に中国5大プラットフォームの1社にまで成長しており、Statista社の発表した数字によると、2019年時点でのユーザー総数は3億人を突破しています。
REDユーザーの中心は都市部在住の若い女性で、コスメ、ファッション、旅行、グルメといった生活における幅広いコンテンツについて写真や動画を投稿できるSNSです。
また、多くのKOLがこのRED(小紅書)を通して商品の紹介やレビューを行っており、ユーザーは自身の生活について投稿するだけでなく、KOLや知り合いの投稿から気になった商品を購入しています。
3. Facebook
Facebook社は、2020年6月にから日本でEC作成機能「Facebookショップ(Facebook Shops)」がリリースされました。
Facebookショップでは、コマースマネージャという管理ツールを通じてカスタマイズ可能なオンラインショップを無料で作成することができ、FacebookやInstagramなど同社のアプリで公開できます。
決済(Facebookではチェックアウトをいいます)方法は、 FacebookとInstagramで直接に決済するか、自身の商品のウェブサイトで行ってもらうか、またはWhatsApp、Messengerを通して決済の案内を送信することの3種類となります。(FacebookとInstagramでの直接決済は2021年2月時点アメリカのみ利用可能です。)
また、Facebook社は2020年7月にInstagramショップをInstagramの発見タブに導入しました。
これより、発見タブでユーザーの興味関心の高い商品が表示されることができます。
さらに、これからFacebookとInstagram内でライブコマース機能も展開する予定で、現在テストを行っています。(2021年2月時点)
ソーシャルコマース市場の拡大に期待
ソーシャルコマースとは、SNSとECを掛け合わせたECサービスの1つで、商品の検索、口コミの確認、商品の決済までを一つのアプリやサービスで完結できます。
これにより、消費者にとっては利便性の向上、企業にとっては、販売機会のロスを防いだり消費者とのコミュニケーションが取れるといったメリットがあります。
現在、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、巣ごもり消費需要が高まり、国内外でECを利用する人が増加しています。
また、国境を越えた移動が制限される今、海外の商品をECを通して求める越境EC需要も高まっています。
ソーシャルコマースへの参入は、企業の認知度拡大やブランディングだけでなく、今できるインバウンド対策の1つである越境EC対策にもつながるでしょう。
<参考サイト>
FACEBOOK: Facebookショップを国内で提供開始、中小ビジネスのオンライン事業をサポート
Research and Markets:Social Commerce - Global Market Trajectory & Analytics
文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ
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