ダイドードリンコが人気アニメ「鬼滅の刃」とコラボした缶コーヒー(以下、鬼滅缶)は、発売から3週間で5千万本を突破する大ヒットとなった。これは同社のコーヒー飲料年間販売本数の約6%に相当する。5千万本突破後も数字を伸ばしており、同社は販売計画本数を1千500万本上乗せすると発表した。鬼滅缶の効果で同社の飲料販売数は浮上したが、缶コーヒーの市場は縮小傾向が続いている。特に若年層の缶コーヒー離れが課題で、鬼滅缶を手にした若者をどれだけリピーターとして残せるかが注目だ。
鬼滅缶発売前2~9月の同社コーヒー飲料販売本数は前年比89.6%だった。同社の飲料は約8割が自販機で販売されており、他社に比べて自販機の比重が高い。コロナ禍で外出機会が減ったことで飲料自販機市場平均でも10%ほど売上げが低下していると推定され、同社も市場に近い動きだった。
10月5日に鬼滅缶が発売されると10月単月では149.5%と大幅に伸びた。チャネル別では自販機チャネルが119.4%、流通チャネルが234.9%。鬼滅缶はコンビニ大手3社で採用されたのをはじめ主要スーパーでも採用されており流通の伸びが顕著だった。
11月単月は110.3%(自販機111.2%、流通106.8%)。さすがに発売直後の10月よりは落ちたが、20%程度押し上げる効果が続いている。2~11月累計のコーヒー飲料売上げも97.6%と前年並みに近い水準まで回復しているが、他に大きな回復要素は見当たらず、ほぼ鬼滅缶効果といえる。(表下記事続く)
異例の販売数をたたき出した鬼滅缶だが、発売前から異例づくめの商品だった。発売45周年を迎える「ダイドーブレンドコーヒー オリジナル」と、新発売の「同 絶品微糖」「同 絶品カフェオレ」の3品でコラボを行ったが、3アイテム合計で28種類のパッケージデザインを発売した。同社は過去に「名探偵コナン」や「ドラゴンボール」といった人気アニメとコラボしてきたが、パッケージデザインは多くて8種類くらいで28種類は異例。これだけデザインが多いと生産現場にも負担がかかり、鬼滅缶発売前の9月には出荷調整も行っていたようだ。過去のアニメ作品とのコラボは、若者や子どもがメーンユーザーの炭酸飲料で実施していた。40~50代の男性がメーンユーザーの缶コーヒーでアニメとコラボすることも異例だ。また、発売に先駆けてネット通販で鬼滅缶のケース販売の先行予約を実施しており、ネット通販でのケース販売も過去にない異例の売上げを記録したようだ。
鬼滅缶3品の内「絶品微糖」は自販機専用専用商品。スーパーやネット通販だけではコンプリートできず、普段自販機を使用しないユーザーを誘導する効果もあった。街中至るところにある自販機だが、いざダイドーの自販機を探すとなると意外にに見つからない。同社のスマホアプリ「Smile STAND」は自販機で飲料を購入するとポイントがたまるサービスだが、自販機の設置場所を探すことも可能で、自販機探しに活用できる。「Smile STAND」では抽選で鬼滅の刃オリジナルQUOカードPayが当たるキャンペーンも実施しており、鬼滅缶をきっかけにアプリをダウンロードした人も少なくない。
鬼滅缶の効果は一時的なもので売上げは元に戻りつつあるが、普段缶コーヒーを購入しない消費者、特に若者にアプローチできた効果は小さくない。また、自販機での購入に関してはダイドー自販機の設置場所が認識されたことも重要な意味を持つ。
提供元・食品新聞
【関連記事】
・活性化するベーコン市場 パスタ人気が一役 料理利用で
・「クノール」軸に下半期で勝負 提案力高めながら商品価値を提供 味の素執行役員 神谷歩氏
・コーヒー飲料 PETボトルVSボトル缶 各ブランドで容器戦略の違い鮮明に
・ビール類 夏行事激減で打撃も新ジャンル好調維持
・納豆 底堅い“生活密着品” 健康&巣ごもりで再び浮上