ヤマダデンキの都市攻略の象徴店舗も閉鎖

 話を首都圏の店舗に戻すと、新型コロナの影響で、都市部店舗の撤退が始まっている。ヤマダデンキは10月4日、東京・新宿市場参戦の象徴だったLABI新宿東口館を閉店した。都市型店舗ブランドの「LABI」で閉店するのは、15年5月のLABI水戸に続く2店舗目となる。10年4月にオープンした同店は、翌年7月のアナログ放送停波に向けてテレビの買い替えで沸いた「地デジバブル」需要を取り込む役割を担った。
 

BCN+R
2020年10月4日に閉店したヤマダデンキのLABI新宿東口館(写真=BCN+Rより引用)

 ヨドバシカメラの本拠地である新宿は、同じカメラ系家電量販店のさくらやに加え、池袋に本社を構えるビックカメラが2000年代に入り、小田急ハルクやビックロ ビックカメラ新宿東口店など出店ラッシュで攻勢を強めるなど、「3カメ」による激戦が繰り広げられた地だ。そこに、郊外店が主力で業界最大手のヤマダ電機(当時)が殴り込んできた象徴的な店舗だった。

 同館のオーロラビジョンが映画やドラマのシーンで「新宿の顔」として定着したかのようにみえたが、10年の時を経て撤退することとなった。閉店の理由について同社は、買収したグループ会社で、お家騒動で世間を騒がせた大塚家具との自社競合を解消するためとしているが、新型コロナの影響も少なからずあったことが推測される。

 なお、大塚家具の買収や社長人事が報道で大きく扱われたのは、お家騒動の興味本位によるワイドショー的な関心からだろう。売上高約1兆6000億円のヤマダHDに対し、大塚家具の売上高は約350億円にすぎない。大塚家具の新宿の店が、LABI新宿東口館とカニバルほどのパワーがあったのかはいささか疑問が残る。そして業界からすれば、ヤマダデンキが売上高1176億円のヒノキヤグループをTOBでグループ化したことのほうが、よほど大きなニュースなのだ。

 さて、ビックカメラも21年1月11日を最終営業日に「池袋東口カメラ館」を閉店することを決断。カメラの専門知識の豊富な販売員を池袋本店に集約することで、サービスの品質を高めるという。木村社長は、コジマの社長時代に3年間で約80店舗を閉店し、筋肉質にしてから魅力的な売り場づくりなど攻めに転じてコジマの再建に尽力した。今回も、新型コロナ以前から不採算だった店舗にメスを入れて、ビックカメラの復活に取り組む。

 現在、新型コロナの第三波が襲う中、収束のメドは見えない。ワクチンが行き渡れば以前の状況に戻るのかどうかもわからない。ただ、来春から山手線などの終電時刻を繰り上げるJR東日本が「人々の働き方や行動様式が元に戻ることはない」との見方を示しているように、新型コロナがもたらした都市部と郊外の逆転現象はしばらく続きそうだ。

 都市部店舗の止血をいかに迅速に行い、EC事業などニューノーマルな生活と相性のよい事業を伸ばしていくかが課題になりそうだ。また、ヨドバシカメラやビックカメラがアウトドアやキャンプ用品の品ぞろえを拡充させたり、ヤマダデンキが住宅やリフォームに力を注いだりしているように、底堅い買い替え需要に支えられている家電販売をベースに、そこからどれだけ新しい事業領域を積み上げることができるかにかかっているといえるだろう。

文・細田 立圭志(BCN)/提供元・BCN+R

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