クロマグロ(ホンマグロともいいます)が泳ぐのを間近で見たことありますか? どちらかというと食でなじみがあるマグロですが、日本の水族館でクロマグロの群泳を常設展示しているのは、東京都葛西臨海水族園だけなんです。今回は、そんなクロマグロの生態や性格などを、その葛西臨海水族園のスタッフの方にうかがってみました。そして、どうして展示が少ないのか? 飼育・展示の苦労なども教えてくれています。キッズのための観察ポイントやウンチクも見逃せませんよ。

※この記事は2020年10月現在の情報です。クロマグロの展示は内容変更、中止・休止する場合もあります。事前にご確認ください。

目次(index)
クロマグロってどんな魚?
クロマグロ一番の特徴
クロマグロのキホン
クロマグロ名前の由来
クロマグロのスピードと生態
クロマグロのカラダ
クロマグロの性格
クロマグロの食事
クロマグロの繁殖と寿命
そのほかのマグロの種類
常設で見られるのは東京都葛西臨海水族園だけ
クロマグロが泳ぐ「アクアシアター」
キッズにおすすめの観察ポイント
お父さん・お母さんのためのウンチク
クロマグロの展示が難しい理由
飼育・展示の苦労とうれしい瞬間
クロマグロにちなんだフード&グッズ

クロマグロについて、いろいろ教えていただいたのは、東京都葛西臨海水族園の三森さんです。

●三森 亮介(みつもり りょうすけ)さん
東京都葛西臨海水族園 教育普及係。生きもの、特に水生生物が好きで水族館の仕事に就いたという23年目のベテラン。好きな魚は小型海水魚のウバウオ

 

クロマグロってどんな魚?

クロマグロ一番の特徴

カラダが大きい“マグロの中のマグロ”
まずは、クロマグロの一番大きな特徴をうかがってみました。『一番の特徴は、やはりカラダが大きいことです。8種類いるマグロの仲間のなかでも、もっとも高級とされていて“マグロの中のマグロ”ということで“本(ホン)マグロ”とよばれることもあります』と三森さん。マグロを代表する魚なんですね。

クロマグロのキホン

マグロ=ツナは日本ではなじみ深い大型の魚
マグロ属の学名は“Thunnus(ツナ)”で、クロマグロが“Thunnus orientalis”といいます。北半球の太平洋、つまり、日本沿岸を含んだ広い太平洋を泳いでいます。食用として流通する場合は“ホンマグロ”の名称を使うことが多く、日本ではなじみの深い魚です。

  • 【学名】Thunnus orientalis
  • 【分類】スズキ目 サバ科 マグロ属
  • 【生息地】北半球の太平洋
  • 【サイズ】全長約3m/体重400kg以上
  • 【寿命】20年以上
水槽を泳ぐクロマグロ(=ホンマグロ)を見ることは珍しいんです(写真=るるぶkidsより引用)

 

クロマグロ名前の由来

目が黒いから? 上から見たら真っ黒に見えるから?
日本でマグロとよぶようになった、名前の由来は2つ説があるようです。目が黒いから“眼黒”→“マグロ”というのが1つ。2つめは、船の上から海中でマグロが泳ぐのを見たとき、真っ黒な魚が泳いでいるように見えて“まっくろ”→“マグロ”という説です。さて、どちらが正しいのでしょうか?

クロマグロのスピードと生態

時速約80kmで泳ぐことも! 眠らず泳ぎ続けてる!?
クロマグロの泳ぐ速さについてたずねると『本気を出すと時速約80kmで泳ぎます』と三森さん。えっ、時速80kmですか? めちゃ速いですね!! 『はい、高速道路を走る車並みのスピードです。そして、止まらないんです。夜でも眠らず、ずっと動いています』。へぇ~、それは大変(?)ですね~。『クロマグロは、陸から離れたさえぎるもののない広い海を泳ぎ続ける生活をしています。太平洋を横断して、日本沿岸の海からアメリカ大陸の西海岸沖まで回遊します』というクロマグロの生態も教えてくれました。

水槽を泳ぐクロマグロ。確かに目が黒いですね(写真=るるぶkidsより引用)

 

クロマグロのカラダ

全長約3m! 体重400kg以上! やっぱりビッグなクロマグロ
『クロマグロは成長すると、全長約3m、体重400kgを超えます。とにかく大きい魚なんです。ちなみに、普段泳いでいるときにオスとメスの見分けはつきません。産卵をするとき、1匹のメスの後ろを複数のオスが追いかけるので、行動の違いで見分けることができます』と三森さん。オスとメスを見分けるのは簡単ではないんですね。

クロマグロの性格

臆病な性格かも!? 環境の変化には敏感です
三森さんは続けて『クロマグロは環境の変化に敏感で、急激な光の変化や水槽に伝わる振動などに驚いてパニックになってしまうことがあります。また、清掃のために水槽に入ってきたダイバーにも近づいてきません。そういう点では臆病な性格といえるかもしれません』。クロマグロは繊細で臆病…人なつっこくはなさそうですね。

東京都葛西臨海水族園にある「マグロとせいくらべ」。これで2mなので、もっと大きくなるクロマグロもいるということですね(写真=るるぶkidsより引用)

 

クロマグロの食事

好物はアジやイカなど。水族園でも自然界と同じ食事
『1歳を過ぎると一部のクロマグロは太平洋を横断して、アメリカ大陸の西海岸沖まで回遊します。魚やイカなどを主に食べています。東京都葛西臨海水族園でも、アジやスルメイカなどをエサとしてあげています』と三森さん。水族園でも自然界と同じ食事ができているんですね。

クロマグロの繁殖と寿命

初夏から夏に産卵。大きいクロマグロの赤ちゃんはとても小さい
『クロマグロは、沖縄の南や日本海で初夏から夏にかけて産卵を行い、ふ化した子どもは日本近海で過ごします。大きくなると全長3mにもなるクロマグロですが、その卵は直径1mmほどしかありません。その卵からふ化する赤ちゃんは大きさ約3mm。大きなクロマグロの卵や赤ちゃんはとても小さいんです』と三森さん。寿命はどのくらいなのでしょう? 『正確な寿命はわかりませんが、20年以上生きるといわれています』とのことでした。

東京都葛西臨海水族園のクロマグロたち。サイズのバランスが絶妙(写真=るるぶkidsより引用)

 

そのほかのマグロの種類

クロマグロを含めてマグロの仲間は8種類
クロマグロを含めたマグロの種類を三森さんにうかがうと『マグロの仲間は、クロマグロ、タイセイヨウクロマグロ、ビンナガ、キハダ、メバチ、ミナミマグロ、コシナガ、クロヒレマグロ(別名タイセイヨウマグロ)の8種類です』とのことでした。

東京都葛西臨海水族園「アクアシアター」にはクロマグロ以外に、マグロとは遠い親戚の関係にあるハガツオとスマも泳いでいます(写真=るるぶkidsより引用)

 

常設で見られるのは東京都葛西臨海水族園だけ

2020年10月現在、クロマグロの群泳を常設で見られるのは、日本で東京都葛西臨海水族園だけです。飼育・展示していた、というところはいくつかありますが、いまも常設なのはココだけなのです。

東京都葛西臨海水族園のガラスドーム。この下にクロマグロが見られる「アクアシアター」があります(写真=るるぶkidsより引用)

 

クロマグロが泳ぐ「アクアシアター」

東京都葛西臨海水族園でクロマグロが見られる「アクアシアター」。ココではクロマグロが泳いでいるばかりでなく“群れ”で泳ぐ姿を見られ、水族園で一番の見どころになっています。

「大洋の航海者・マグロ」という解説があります(写真=るるぶkidsより引用)

 

水槽を泳ぐクロマグロの大きさと迫力は圧巻です(写真=るるぶkidsより引用)

 

総量200トンの水槽をクロマグロたちが泳ぎ回っています(写真=るるぶkidsより引用)

 

「アクアシアター」には座って水槽を見られる、シアターのようなシートが用意されています(写真=るるぶkidsより引用)

 

キッズにおすすめの観察ポイント

ふたたび、東京都葛西臨海水族園の三森さんにご登場いただき、キッズにおすすめの観察ポイントをうかがってみました。『クロマグロには、実は見えていないヒレが隠れています。クロマグロのヒレは、カラダの一番後ろにある三日月形をしていて左右に振って泳いでいるのが「尾びれ」、体の左右に飛行機の翼のように広げているのが「胸びれ」、背中側にずーっと見えているひれは「第2背びれ」、その下のおなか側に見えているのは「尻びれ」です』と三森さん。「アクアシアター」にも、この解説がありました。

「アクアシアター」にあるクロマグロのヒレについての解説(写真=るるぶkidsより引用)

 

三森さん、見えていないヒレというのは? 『「第2背びれ」の前側、背中の真ん中あたりに「第1背びれ」があり、これは普段見えていません。さらに「第1背びれ」のお腹側にも、普段はお腹にピッタリぴったりくっつけている「腹びれ」というヒレがあるんです。この普段見えていないヒレは、マグロが急ブレーキをかけたりカーブをするときなどに見ることができます。水槽でぜひ見つけてみてください』と三森さん。これは親子で観察してみたいポイントですね。

お父さん・お母さんのためのウンチク

親から子どもたちに話してあげられるようなウンチクも教えてもらいました。『クロマグロが泳ぐ水槽の底をのぞいてみると、小さな白い粒のようなものがたくさん落ちていることがあります。これはエサであげたアジの体内にあった“耳石”という固い部分。アジの骨はほとんど消化され形は残りませんが、とても固い“耳石”は消化されずに水槽底に落ちてしまうんです。“耳石”はアジ1匹に2つあります。たくさんの“耳石”が落ちているのは、クロマグロがエサのアジをたくさん食べた証拠なんですよ』と三森さん。

水槽の底に落ちている“耳石”を探してみてください(写真=るるぶkidsより引用)

 

クロマグロの展示が難しい理由

クロマグロを常設展示しているのは東京都葛西臨海水族園だけです。どうして、こんなに少ないのか、三森さんに質問してみました。『やはり、まずカラダが大きくなることがあげられます。そして、とても速いスピードで水槽内を泳ぐことがあります。マグロはさえぎるもののない広い海で生活しているため、障害物を避けながらスイスイ泳ぐといったことが苦手なんです。なので、とても大きな水槽が必要になってきます。また、ほかの魚では何でもないような光の変化や水槽に伝わる振動などに驚いてパニックになってしまうことも飼育・展示が難しい要因です』とのこと。なるほど、クロマグロの生態や性格から飼育・展示が難しくなっているんですね。

飼育・展示の苦労とうれしい瞬間

そんなに難しい飼育・展示を実現させた苦労や工夫をうかがってみました。『光の変化や水槽に伝わる振動などにとても敏感なので、なるべく急な環境の変化がないように気をつけて飼育しています。朝、照明をつけるときや夕方消灯するときも30分から1時間ほどかけてゆっくり変化するようにしています』。なるほど、夜も真っ暗にはしないんですか? 『夜も薄暗いあかりをつけて、決して真っ暗にすることはありません。年に1回、電気設備の点検のため水族園全体が停電するのですが、そのときもクロマグロの水槽を真っ暗にしないように大きな予備電源を用意するなど、クロマグロを驚かせないようにするのに苦労しています。ただ、水槽の前に立っていると、たまにマグロと目が合います。飼育担当だとわかっているかは不明ですが、ちょっと可愛く感じる瞬間です』。そんな瞬間があるのは飼育担当の方ならではのことですね。

クロマグロの飼育・展示には気づかいと苦労がいっぱいなんですね(写真=るるぶkidsより引用)

 

クロマグロにちなんだフード&グッズ

最後に、東京都葛西臨海水族園にある、クロマグロにちなんだフードとグッズを紹介します。フードはレストラン「シーウィンド」で、グッズはギフトショップ「アクアマリン」「アクアスケープ」でどうぞ。

まぐろカツカレー880円はサクサクのまぐろカツが美味。カレーは中辛(写真=るるぶkidsより引用)

 

メジもなかアイス塩バニラ味300円。メジとはマグロのことです(写真=るるぶkidsより引用)

 

ぬいぐるみ クロマグロはSサイズ1870円、Mサイズ4400円(写真=るるぶkidsより引用)

 

自分でマグロをつくれる、ナノブロック マグロ1100円(写真=るるぶkidsより引用)

 

クロマグロ以外のマグロなら、キハダやメバチなどが見られる水族館はあります。しかし、迫力満点のクロマグロの群泳が常設で見られるのは東京都葛西臨海水族園だけです。観察ポイントやウンチクを知ったうえで見ると、より楽しめますよ。ぜひ訪れてみてくださいね。

 

文・佐々木隆/提供元・るるぶkids

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