モトリーフール米国本社、2020年11月22日投稿記事より
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を引き金にeコマースの成長は加速し、この分野を長年リードするアマゾンとアリババは、それぞれの市場、米国と中国で大きな成功を収めています。
しかし、世界で年間23兆ドル超もの個人消費を生み出す巨大な小売市場では、その他のeコマース企業が成長する余地が十二分にあります。
メルカドリブレ(NASDAQ:MELI)、シー・リミテッド(NYSE:SE)、ファーフェッチ(NYSE:FTCH)は注目に値するでしょう。
1.メルカドリブレ:ラテンアメリカはデジタル経済競争で依然大きな後れを取っている
ラテンアメリカでは、ここ数年、eコマースの時代が到来しています。
同地域におけるオンライン小売市場およびデジタル決済のリーダーであるメルカドリブレの売上高は、過去10年間に急拡大し、過去12カ月間実績では33億ドルを上回りました。
同社は時価総額700億ドルの巨大企業に成長しましたが、中南米の小売販売におけるeコマースの割合は依然として1桁台半ばであり、同社の長期にわたる成長基調が終わりを迎えるようには見えません。
パンデミックがオンライン販売への移行を大きく促進し、メルカドリブレはその恩恵を受けています。
第3四半期には、アクティブユーザー数は前年同期から92%増の7,600万人超、流通取引総額(GMV)は同62%増の59億ドル、子会社のメルカドパゴによる総決済額は同92%増の145億ドルとなりました。その結果、同四半期の売上高は同85%増の11億ドルでした。
また同社の収益性も大きく向上しており、2020年第1~3四半期(1-9月)の間に創出したフリーキャッシュフロー(FCF、売上高から現金ベースの営業費用と設備投資を引いたもの)は7億6,600万ドルと、前年同期の2億7,200万ドルから急激に増加しています。
FCFマージン(売上高に対するFCFの比率)は29%と良好です。
執筆時点での過去12カ月実績ベースのPSR(株価売上高倍率)は21倍、株価FCF倍率は87倍で、同銘柄が割高なのは確かです。
しかし、いまだ初期段階にあるデジタル経済でメルカドリブレが早くから先行していることを考えると、当面は同社が急成長を続けていく可能性は十分にあります。
2.シー・リミテッド:デジタル販売分野における東南アジアのリーダー
シーもまた東南アジアにおけるデジタル経済の力強い立役者へと急成長しており、メルカドリブレの市場であるラテンアメリカにも進出しています。
シーの事業は、ビデオゲーム開発のプラットフォーム(バトルロイヤルゲーム「Free Fire」を含む)とモバイルゲーム・サービスから始まりました。
その後、子会社のショッピーを通してeコマース事業に手を広げ、オンライン販売が小売全体に占める割合が依然として1桁台前半であるタイ、ベトナム、マレーシアなどの国へも拡大しています。
同社は事業を2部門に分割していますが、両部門ともCOVID-19による消費行動の大きな変化により業績は好調です。
第3四半期売上高は「デジタル・エンターテインメント(DE)」ビデオゲーム部門が、前年同期比で73%増の5億6,900万ドル、「eコマース・その他サービス」部門(初期段階にある決済プロセス事業も含む)が同173%増の6億1,900万ドルとなりました。
ショッピーの最大の市場であるインドネシアでは、日次の平均注文額が前年同期比で124%増の340万ドルとなり、ショッピーのアプリはインドネシアとシンガポールにおいてショッピング分野のアプリで首位を維持しました。
興味深いことに、事業エリアは限られているにもかかわらず、ショッピーは世界中のショッピングアプリの中でダウンロード数が2位であり、これは恐らく同社のラテンアメリカなど新たな地域への拡大によるものと思われます。
一方で、シーの残念な点はその収益性です。2020年第1~3四半期の粗利益率はメルカドリブレが46%である一方、シーは29%でした。
しかし、シーが特にeコマース分野で規模を拡大すれば、この数値は改善するでしょう。
こういった状況の中、シーの過去12カ月実績ベースのPSRは25倍に近く、メルカドリブレよりも高い水準です。
それでも、メルカドリブレと同様に、シーは急成長しており、デジタル経済が大きく伸びている東南アジアとラテンアメリカの市場において、数十億にものぼる潜在的な消費者へのアクセスがあります。
次の決算が良好であれば、シーは長期投資家にとって引き続き有望でしょう。