(本記事は、松尾昭仁氏の著書『1万2000人を見てわかった! お金に困らない人、困る人』集英社の中から一部を抜粋・編集しています)

10年後 食えない人は、「ない」ものにフォーカスする 食える人は、「ある」ものにフォーカスする

(写真=ZUU online libraryより引用)

私が開催している起業セミナーには、これから独立・起業したいという起業家予備軍が参加します。しかし、実際に独立・起業できる人は、そう多くはありません。結局、踏ん切りがつかず、会社勤めを続ける人も多くいます。

起業志望なのに起業をあきらめてしまう人の共通点は、「〇〇がないから」を理由にすることです。

「キャリアがないから」
「資格をもっていないから」
「人脈がないから」
「資金が十分にないから」

たとえば、自分にはキャリアがないからといって、40歳を超えてからMBA(経営学修士)を取得しようとする人がいます。

努力の末にMBAを無事取れれば本人は自信がつくのかもしれませんが、現実にはキャリアアップにつながるかどうか疑問です。起業で成功するのにMBAは必須の要件ではありませんし、まわりを見渡せばMBAホルダーはたくさんいるので、それが差別化につながるともかぎりません。

そのほか、起業するために資格取得に走る人もよく見かけます。「弁護士になりたい」という目標があるなら、司法試験の勉強は避けて通れません。「医者になりたい」という夢があるなら、医学部に入学し、国家試験にパスしなければなりません。

しかし、「起業するにあたって役に立つだろうから」といった理由で、明確なビジョンもなく、行政書士や社会保険労務士の資格合格を目指す人がいますが、それはMBAと同様、自己満足にすぎません。起業したあとのビジョンがないのに資格を取ったところで役に立つでしょうか。

●今もっている「武器」で戦おう

「とりあえずビール!」と同じように、とりあえず英語を勉強し始める人も少なくありません。実際に英語を使うビジネスで起業するなら別ですが、TOEICのスコアを上げたからといって、それで食べていけるわけではないのです。それよりも、日本語力を磨いたほうがコミュニケーションがとれ、よほど効果的です。「自分は学歴がないから」というコンプレックスを抱え続け、自信をもてない人もいますが、20代ならともかく、30代、40代になれば、もはやどこの学校を出たかなどは直接仕事には関係ないでしょう。学歴コンプレックスを埋めるために大学や大学院に入り直したり、資格を取ったりするよりは、「どうやってお金を稼ぐか」を考えたほうがビジネスパーソンとしていいのではないでしょうか。

少し厳しい言い方になりますが、明確な目標もなく、「ない」ものにフォーカスして勉強を始める人は、自信のなさを勉強で埋めようとしているだけです。

このように、お金に困る人は、「ない」ものにフォーカスする一方で、お金に困らない人は「ある」ものにフォーカスします。

起業するときも、これまで会社勤めで培ってきた知識やノウハウ、人脈をフル動員してスタートを切ります。今もっている武器で戦えばいいのです。成功する人は、走りながら必要なものが出てくれば、その都度対応していきます。

たとえば、ある仕事を成功させるために英語力が必要になったとき、「自分で英語を勉強しよう」という発想にはなりません。「優秀な通訳を雇おう」と考えます。最近では自動翻訳の精度が上がっているので、それで事足りることもあるでしょう。

本の出版でも、「本を書くために今から経験を積みます」と張り切る人がいますが、これまでの実績を本にすることを考えたほうが早く出版することができるのです。

たとえば、社会保険労務士として開業した人であれば、業界の重鎮のような専門的で高度な内容は書けませんが、これから社労士になりたい人に向けて資格試験の勉強法などについて教えられるかもしれません。今、自分がもっているもので勝負できる人が、早く結果を出し、お金に困らない人になれるのです。

10年後 食えない人は、同じレベルの人と付き合う 食える人は、上のレベルの人と付き合う

良くも悪くも、人はまわりに流される生き物です。ですから、環境しだいで後々、能力に差がつき、将来稼げるお金にも大きな差が生まれます。

これは、私の学生時代の話です。

同じクラスに偏差値63のクラスメイトがふたりいました。Aくんは高校受験直前まで勉強を頑張り、進学校にギリギリ滑り込むことができました。もうひとりのBくんは、「家から歩いて通えるから」という理由だけで地元の新設校を受験し、楽々合格しました。

その後、Aくんは進学校の厳しい競争の中でもまれて難関大学に合格。一方、Bくんは新設校ではトップクラスの学力でしたが、いわゆる「お山の大将」になってしまい、希望する大学の受験に失敗してしまいました。

AくんとBくんは中学時代、同じ偏差値でしたが、大学受験の時点では、学力に大差がついていたのです。

レベルの高い環境に身を置くことによって、人はまわりに引っ張られる形で能力も上がっていきます。進学校に入学したAくんは、学力的には当初末席でしたが、勉強ができる集団にしがみつくことによって、結果的に難関大学に進学できるほどの学力がついたのです。

医師の子どもが医学部に進んで、将来医者になったり、東大出身者の子どもが東大に進学したりすることがよくあります。話を聞くと「親が医者だったから医者になった」「親が東大卒だったから東大に進んだ」と当たり前のように言うのも、その環境が大きく影響しているからでしょう。

私自身、これまで23冊の書籍を出版しています。まわりから「5冊、10冊、20冊出した時点で満足しないのですか?」と言われたことがあります。

しかし私は、まだまだ出版したいという意欲があります。なぜなら、著者仲間に50冊、100冊の本を出している人がいますし、大ベストセラーを出版している人も複数いるからです。彼らの活躍を見ていると、「私ももっと頑張らねば」という気持ちがわいてくるのです。

●お金に困っていない人をロールモデルにする

同じレベルの人と付き合っていると、「このくらいでいいや」という慢心が生まれ、それ以上成長できません。

同僚と居酒屋に行って上司や会社の愚痴を言っても、仕事のスキルもポストも上がらず、リストラ対象になってしまうかもしれません。常温の水にカエルを入れ、徐々に熱していくとその水温にカエルは少しずつ慣れていき、結果、熱湯になったときには飛び上がることができず、茹で上がってしまいます。

そんな茹でガエルになりたくなければ、今の自分のレベルよりも上位の人と付き合うべきです。そうしなければいつか置いていかれてしまうのです。

自分より能力やレベルが上の人と付き合うのは簡単なことではありませんが、必死でしがみついているうちに自然と自分の水準もアップしているものです。

あなたが目指すポジションがあるなら、そのポジションをすでに手にしている人と付き合うことが大切です。お金に困らない生活を手に入れたいなら、そういう生活をしている人とコンタクトをとって思考や行動を学ぶべきです。

会社に理想とする人物がいるのなら、その人と積極的に行動をともにしてみる。そんな上司や先輩に「仕事のコツを教えてください」と頼んでもいいでしょう。「食事やお茶をご馳走しますので、どうぞお時間をください」と言えば、同じ組織の人間なら無下には断れないでしょう。

社内にロールモデルが見当たらないなら、社外で探してもいい。今はSNSで簡単に縁がつながるので、コンタクトをとったりコミュニティーに参加したりしてみる。また、目標とする人物のセミナーや講演会に参加して、刺激を受けることもおすすめします。