クレジットカードの申し込み時に気になるのが審査に受かるかどうかということ。少しでも審査に有利なように、つい年収欄を少し多めに書きたくなるものだが、果たしてそれは許されるのか?それは虚偽の記載として問題視されるのだろうか?

目次
1,クレジットカードの審査と年収の関係は?
2,年収の記載は手取りか額面か?正確な年収を書いたほうがいい?
3,嘘の年収を記載するとどうなるか?
4,人気のクレジットカードを作るのに必要な年収は?
5,クレジットカードの審査と年収に関するQ&A

1,クレジットカードの審査と年収の関係は?

クレジットカードの審査において年収は重要な項目だが、そればかりが重要なわけではない。ここではまず、審査での年収の位置づけについて説明しよう。

クレジットカードの審査で判断される項目は?

クレジットカードの申し込み時に記入する項目のうち審査の判断材料となるのは主に、

  • 年収
  • 年齢
  • 勤め先
  • 勤続年数
  • 雇用形態
  • 持ち家か賃貸か
  • 他社借り入れ件数・金額

など。また、それとは別に信用情報機関に登録されたクレジット利用履歴や異動情報(支払い延滞や自己破産などの金融事故)も調査される。

年収はあくまで1つの要素にしかすぎない

支払い能力を判断するうえで年収は重要な要素となるが、継続して支払いができるかどうかを判断する材料として、勤め先や役職、勤続年数、雇用形態なども重視される。そのため、年収500万円のフリーランス職の人が審査落ちをする一方で、年収200万円の公務員が同じカードの審査に通るといったことが起こりうる。

また、年収の判断では年齢も重要で、たとえば20代の年収300万円と40代の年収300万円では、将来性という観点から前者のほうが審査ではより有利となる。

そのほか、過去のクレジットカードやローンの利用履歴、あるいは携帯電話の分割払いの利用履歴なども重視される。延滞がなくきちんと支払っていれば、金銭の扱いに関して信用に値する人と見なされるからだ。

年収が高いからといって利用限度枠が高くなるわけではない

上に挙げた理由から、年収が高いからといって発行されたカードの利用限度額が高くなるとは限らない。もちろん審査上、年収は高いに越したことはないが、そのほかの項目も含め総合的に判断してクレジットカード発行の可否と利用限度枠が決められるからだ。

希望の利用限度枠が得られなかった場合、そのカードで利用実績をある程度積んでから増枠(増額)を希望すると、再度の審査を経て希望が通ることもある。また、利用実績次第でカード会社の側から積極的に増枠してくれるケースもある。

2,年収の記載は手取りか額面か?正確な年収を書いたほうがいい?

クレジットカードで審査される項目の一要素でしかない年収。しかしカード申し込み時は年収をどう記載するか、と悩む人もいるだろう。

手取りか額面か?

一般的に「年収」とは、所得税や住民税、社会保険料などが引かれる前の「総支給額」「額面の年収」のことを指す。これは実際の手取り額とは異なっているわけだが、カード申し込み時には年収の欄に「額面の年収」を書けばいい。ボーナスや残業代などもそこに含めることになる。

自営業やフリーランスはどうする?

自営業やフリーランスなどの場合、収入から経費を引いた所得金額を記入する。

どれくらい正確な年収を記入すべき?

多くの場合、カード申し込み時の年収記入欄は「○○万円」という形式になっており、そもそも千円未満の単位まで含む正確な年収は記入できない。そうしたこともあり、年収欄に記入する年収額はおおまかで構わないとされている。

正確な年収の調べ方

多少はおおまかでOKとはいえ、やはり実際の年収から離れすぎても虚偽となってしまう。記憶に頼るのではなく実際の年収を調べたうえで記入したほうがいいだろう。

会社員の場合、年末に会社からもらう源泉徴収票に記載されている「支払金額」や「支給額」をカード申し込み時の年収欄に記入すればいい。一方、フリーランス職や自営業の人は確定申告書に記載する「所得金額」を確認すれば、正確な年収がわかる。

収入証明書の提出が必要な場合は?キャッシング枠を希望するとき

キャッシング枠を希望する場合、ほかの貸金業者(クレジットカード会社や消費者金融など)からの借り入れの状況次第で、源泉徴収票などの年収証明書の提出が求められることがある。

これは貸金業法の規定によるもので、具体的には、他社を含めた総借入残高が100万円超となる場合、あるいは、そのカード会社からの借入残高が50万円超となる場合に年収証明書が必要とされる。

債務者の借入総額は年収の3分の1までに制限されるため、それに抵触するキャッシング枠は設定されないことになる。

3,嘘の年収を記載するとどうなるか?

カード申し込み時に記入する年収について、多少上下するのは気にしないでよいと前述した。一方で大幅な年収水増しを行った場合はどうなるのだろうか?想定される3つのケースを次に紹介しよう。

ケース1,審査で落とされる

カード申し込み時の年収記入が自己申告となっているのは、申し込み者の勤務先企業や役職、勤続年数、年齢などの項目から年収額をある程度推定できるためだ。申し込み時に記入された年収額と、各項目からの推定額が大きく違っている場合、記載内容に虚偽があると見なされて審査で落とされる可能がある。

そのような形で審査落ちをした場合、「社内ブラック」と呼ばれる要注意顧客リストに名前が載り、そのカード会社では二度とカードを作れないと考えたほうがいいだろう。

さらに、申し込みと審査落ちの事実は半年間、信用情報機関に記録される。そのため、他社クレジットカードでも、半年間が審査を通過できない可能性が高くなる。

ケース2,カードの強制解約

審査に通過してカードを作ることができても、その後、年収の虚偽申告が明らかになった場合、カードの契約は強制解約される。この場合も「社内ブラック」に名前が載り、そのカード会社では二度とカードを作れなくなる。

ケース3,法的な責任を問われる可能性も

法律を厳密に適用するなら、詐欺罪や詐欺未遂罪に問われる可能性もある。実際にそうした事態になることはまずないだろうが、可能性がゼロではない。クレジットカードの申し込みで嘘をつくことは、法律にも抵触しかねない行為であるという事実は心しておきたい。

なお年収のほか、「他社借入件数・金額」枠の件数や金額についても正確な記入を心がけたい。これについては、カード会社は信用情報機関などで簡単に照らし合わせができるので、ある意味、年収以上に正確な記入が求められるといっていいだろう。

件数や金額に若干の間違いがある場合は単なるケアレスミスと捉えられるだろうが、それはそれで「自身の借入金に無頓着な人間」と見なされて審査ではマイナスに働いてしまう。

4,人気のクレジットカードを作るのに必要な年収は?

クレジットカードの審査では年収だけが重要なわけではないと説明したが、それでも1つの目安になることには違わない。

どのカード会社でも審査基準は非公開とされており、年収条件に関しては口コミ情報に頼るしかないが、ここでは参考までに人気の高いクレジットカードについて、カードランク別に年収条件の目安を紹介してみよう。

一般カードの審査における年収条件

カード名 年会費 年収目安
ACマスターカード 無料 10万円~
楽天カード 無料 100万円~
Orico Card THE POINT 無料 200万円~
dカード 無料 200万円~
三井住友カード 1,375円(税込) 200万円~
(※各社ホームページを元に筆者作成)

 

一般カードに関しては年収200万円以上あれば、多くのカードで審査に通る可能性があるとされている。流通系カードなら100万円以上で審査通過するものもある。また、消費者金融のアコムが発行する「ACマスターカード」なら、他社借り入れがない場合、年収10万円程度でもカードが発行されるケースがあるようだ。

ゴールドカードの審査における年収条件

カード名 年会費 年収目安
セゾンゴールド・アメックス 1万1,000円(税込) 300万円~
dカードGOLD 1万円(税別) 300万円~
アメックス・ゴールドカード 3万1,900円(税込) 350万円~
JCBゴールド 1万1,000円(税込) 400万円~
三井住友カード ゴールド 1万1,000円(税込) 500万円~
(※各社ホームページを元に筆者作成)

 

ゴールドカードというと一昔前は高額所得者のカードという印象だったが、現在では年収300万円以上で審査通過するカードも多く、より手軽に持てるようになっている。とはいえ、JCB自社発行カードや三井住友カードなどステータス性の高いカード会社のゴールドグレードは、年収条件が多少厳しく設定されていることもあるようだ。

プラチナカードの審査における年収条件

カード名 年会費 年収目安
MUFGカード・プラチナ・アメックス 2万2,000円(税込) 400万円~
JCBプラチナ 2万7,500円(税込) 450万円~
セゾンプラチナ・アメックス 2万2,000円(税込) 500万円~
アメックス・プラチナカード 14万3,000円(税込) 500万円~
三井住友カード プラチナ 5万5,000円(税込) 600万円~
(※各社ホームページを元に筆者作成)

 

プラチナカードというと以前は招待制で、富裕層しか持てない印象だった。現在では申し込み制のカードも増え、年収条件としては500万円以上のものが多いが、400万円台から審査通過が可能なものもある。

群を抜いて年会費が高額なアメックスに関しては、年収1,000万円が目安とされた時代もあった。しかし、現在では審査のハードルが下げられ、500万円以上で審査通過が可能といわれている。

なお、これはあくまで目安であり、職種や年齢などの条件によってかなり上下すると考えてほしい。たとえば、公務員など収入や雇用状況が安定した職種の人はここで挙げた年収条件をかなり下回っていても審査通過するかもしれない。その逆に、自営業やフリーランス職の人はここで挙げた年収条件をクリアしていても、審査通過が難しいことがあるだろう。

5,クレジットカードの審査と年収に関するQ&A

最後にクレジットカードの審査と年収との関係についてのよくある質問とのその答えを紹介しよう。

Q1,無収入の主婦や学生はクレジットカードを作れる?

これについてはカードによって異なり、申し込み資格として「主婦や学生も可」となっていたり、年齢条件だけが書かれたりしていれば作れる。一方で「安定した収入のある方」となっていれば難しい。前者の場合は本人の収入ではなく世帯年収で審査されることになる。

主婦や学生が「安定した収入のある方」という条件のカードを持ちたい場合は、収入のある家族に本会員となってもらい、その家族カードを持つという方法をとるといいだろう。また、学生なら本人が無収入でもOKな学生専用カードを作るという手もある。

年会費が高額なハイステータスカードの多くは、安定した収入のある人でないと本会員になれないが、まれに主婦OKというカードもある。たとえば、年会費2万7,500円(税込)の「銀座ダイナースクラブカード」「銀座ダイナースクラブカード/和光」は、世帯収入があれば専業主婦でも本会員になることが可能だ。

Q2,パートやアルバイトの場合はどうなるのか?

申し込み条件に雇用形態が明記されているケースは少ないが、はっきりとパートやアルバイトは不可と書かれていることもある。たとえば、アメリカン・エキスプレスの自社発行カードでは、「パートまたはアルバイトの方のお申し込みはお受けしておりません」と明記されている。

申し込み資格が年齢条件だけの記載だったり「収入のある方」となっていたりする場合は、パート・アルバイトでも審査通過する可能性がある。その場合、同居家族の年収が審査のポイントになることが多いだろう。一方、「定職についている方」「安定した収入のある方」だとパートやアルバイトの審査通過は厳しそうだ。

Q3,年収の低さが気になる場合はどうしたらいい?

年収が低くて審査が心配な場合は、キャッシング枠を「0円」で希望すると審査通過の可能性がより高くなる。

そのほか、審査に通りやすいクレジットカードをまず作り、そこで1年くらい利用実績を積んでから、本当に申し込みたいカードに挑むという方法もある。

審査に通りやすいカードとは、流通系の「楽天カード」「イオンカード」「ファミマTカード」「セブンカード・プラス」「エポスカード」などのこと。これらのカードは店舗での利用が期待されて発行されるため、年収が低い申し込み者に対しても、低い利用限度枠(10万円など)で発行されることがある。ちなみに、そのような発行は「温情発行」ともいわれる。

また、消費者金融系となるがアコム発行の「ACマスターカード」もまた、審査に通りやすいカードといわれている。

Q4,年収が変わったときはどうすればいい?

昇進や降格、転職などにより年収が大きく変化した場合は、カード会社に申告する必要があるのだろうか?

これについてはカード会社により対応が違う。たとえば、三井住友カードではネットから新しい年収額を申告するよう促されており、個人事業者であれば年収証明書類の提出が必要となっている。

そのほか、更新時や利用枠の増額申し込み時にカード会社から年収が確認され、その場合にだけ対応すればいいケースもある。

Q5,カード申し込み後に会社に確認がいくことはある?

申し込みで記入した勤め先に在籍していることを確認するため、会社に電話がかかってくることはある。ただし、そのときに会社に年収を確認するようなことはない。

通常の在籍確認では申し込み者自身に電話が取り継がれ、そこでいくつか質問に答えることになる。ただし、本人不在時でもあっても電話に出た代わりの者が在籍を証明できればそれで十分だ。

なお、「ACマスターカード」を発行するアコムに関しては、消費者金融ということもあってか、在籍確認の電話では担当者の個人名だけを名乗り、会社名(アコム)を出すことはないと明記されている。

 

モリソウイチロウ
執筆・モリソウイチロウ
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカードに詳しく、専門サイトでの執筆も行っている。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。
「ZUU online」をはじめ、さまざまな金融・経済専門サイトに寄稿。特にクレジットカードに詳しく、専門サイトでの執筆も行っている。雑誌、書籍、テレビ、ラジオ、企業広報サイトなどに編集・ライターとして関わってきた経験を持つ。

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