インド洋に位置する島国モルディブは、7月15日から観光客の受け入れを再開する見通しです。モルディブは観光が国の経済の中心となっており、新型コロナウイルスの影響で観光収入が激減したことで、国の経済が危機に立たされていました。

6月から7月にかけて観光客の受け入れを再開する国や地域は少なくありませんが、モルディブは一律のPCR検査や新型コロナウイルスの陰性の証明書なしで入国を許可するという点で、ほかの多くの国々と異なります。

世界中で新型コロナウイルスの感染が今なお拡大する中、なぜモルディブは観光客の受け入れ再開に踏み切ったのでしょうか。

目次
モルディブ、一律のPCR検査なしで観光客の受け入れを再開

今後は開放的なリゾートやアクティビティが人気に?

ゴールデンルートから外れた地方エリアにもチャンス

モルディブ、一律のPCR検査なしで観光客の受け入れを再開

モルディブ観光省によると、モルディブは7月15日から、日本を含む海外からの観光客を受け入れることを決定しました。入国時に検温や選別検査が行われるものの、新型コロナウイルスの陰性の証明書などは必要なく、熱や咳などの症状がない限り、全入国者を対象としたPCR検査や隔離措置は行われないということです。

モルディブではこれまでに約2,500人が新型コロナウイルスに感染し、12人が死亡しました(7月9日時点)。3月に発出されていた緊急事態宣言が7月14日まで継続となる一方、7月に入ってからは国内での1日の新規感染者数が10~30人程度と、感染状況は徐々に落ち着いてきているとのことです。

モルディブは観光産業が盛んな国で、国の歳入の3分の1を観光業が占めています。長期にわたる入国制限の結果、観光収入が減少したことで国内の経済状況が悪化してしまったため、今回の観光客受け入れ再開に踏み切ったようです。

受け入れ再開のガイドライン:無人島に滞在することが条件

15日からの観光客受け入れ再開にともない、モルディブ観光省は、入国時の対応や滞在中の過ごし方、施設の再開などに関する具体的なガイドラインを公表しました。

同ガイドラインによると、7月15日から31日までは、観光客が滞在できるのは無人島のみだということです。滞在にともなう予約も7月31日までは無人島内の宿泊施設やクルーズ船に限られ、有人島内で滞在できるのは8月1日からとなります。また、しばらくの間、観光客が1回の滞在につき予約できる宿泊施設は1軒に限られるということです。

海外から観光客が来訪しても、滞在するのは無人島内の1軒の宿泊施設に限られるため、モルディブ国内の一般市民とは接触がなく、新型コロナウイルスの感染が拡大する恐れは少ないと判断されたものと考えられます。

なお、滞在中はあらゆる場で新型コロナウイルス対策が徹底されており、観光客はソーシャルディスタンスを保つことが求められます。

さらに観光客は、島への到着前または到着時に追跡アプリをダウンロードすることを求められており、感染者と接触した場合本人に連絡が行くようになります。モルディブ空港ではPCR検査を受けられる体制が整っているため、母国への入国時に陰性の証明書が必要である場合には帰国前に空港で用意できます。

宿泊施設などで観光客を受け入れるスタッフについては、マスクや手袋、フェイスシールドなど感染防止グッズの正しい使い方や、施設の消毒の手順、また施設内で陽性者が出た場合の対処法などについてトレーニングを受ける必要があるとのことです。

今後は開放的なリゾートやアクティビティが人気に?

コロナ禍の旅行市場では、ソーシャルディスタンスを保てる場所が人気になると予想されます。

例えば、アメリカのマーケットリサーチ会社Destination Analystsが7月6日に公表した調査結果によると、2020年に旅行や観光を計画しているアメリカ人は、ビーチリゾートに関心を持っている傾向が強いということがわかっています。

また、台湾の訪日旅行メディアサイト「旅行酒吧(トラベルバー)」が6月29日に発表した調査結果によると、台湾人1538名のうち83%が、「次の訪日時に行きたい場所」という項目で「自然が多い場所」と回答しました。新型コロナウイルス対策として求めていることについては、63%が「ソーシャルディスタンスの保持」と回答しています。

あらゆる旅行や観光が新型コロナウイルス対策の上に成り立ち、アクティビティに関してもソーシャルディスタンスを保てる屋外の開放的な場所が観光客に支持されるようになると考えられます。

モルディブのように整備された無人島が観光資源として存在しない場合でも、山や海といった自然を活かし、新型コロナウイルスの感染リスクが比較的低い観光を提供することは可能でしょう。

Voyagin、日本国内向けに「3密」避けるアクティビティ提供開始

楽天が運営する旅行体験予約サービス「Voyagin」はこのほど、訪日外国人観光客向け商品のうち200の体験プランを日本人観光客向けに販売することを決定しました。

現在は海外からの入国制限により訪日外国人観光客がほとんどいない一方、日本人観光客の旅行需要は今後伸びていくことが予想されます。今回の販売方針の変更は、そのような状況下での新たな試みとなりました。

日本人観光客向けに販売されている体験プランとしては、沖縄県でのビーチサイクリングツアーやジャングルバギーツアー、兵庫県山陰海岸でのカヤックツアーなどがあります。

ソーシャルディスタンスを保ちやすいアクティビティや、少人数で参加できるプランなど、ウィズコロナでも提供可能な体験プランが多く選ばれました。7月1日時点では、200の体験プランのうち約半数で新型コロナウイルス対策の内容も併せて掲載されています。

ゴールデンルートから外れた地方エリアにもチャンス

「ゴールデンルート」と呼ばれる東京・京都・大阪など国内の定番観光地を巡るル―トは、インバウンド市場において人気が高いものの、総じて観光客が多く、「密」になりがちです。

前述の通り、ウィズコロナ・アフターコロナの旅行においては、屋外のソーシャルディスタンスを保ちやすい場所が人気になると考えられます。ゴールデンルートには入っていないものの、以前から根強い人気のある北海道、北陸、九州、沖縄などのエリアがさらに支持されるようになる可能性もあるでしょう。

今後の訪日旅行では、宿泊施設や観光スポット選びにおいて新型コロナウイルスへの対策が徹底されているかどうかが観光客にとって重要な判断基準となります。モルディブのように、受け入れ再開にあたってガイドラインを公表することで観光客に徹底的な対策をアピールし、また安心感を与えることにもなります。

当分の間、日本の観光業におけるターゲットは日本人観光客となりますが、国内向けにも同様に新型コロナウイルスへの対策を行い、それを観光客にアピールすることで、誘致に努めることが必要です。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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